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第六章ー9

 南原さんは、悠が「こっちからやめてやる」と言い出した時こそ驚いた表情をしていたが、余裕の表情に戻っていた。

 二人や私に、非があることを認めさせた上で、打ち切りたいのだろう。人気番組である『百坂・東都のグレーゾーン』を、南原さんの独断で切ったとなれば、会社のイメージや、自身の求心力にひびが入る。

 だから、ひたすら煽っている。

 悠が「自分たちが悪かった」と認め、その上で「辞める」と言い出すように。

 それはともかく。



 ――ここ、ですかね。



 私は、ふう、と深呼吸をしてから、一歩、進み出る。

「南原さん、一つ、いいですか」

「おや? 北条さん、あなた、今まで黙っていましたが――」

 南原さんの言葉を無視して、私は言う。

 切り札を、切る。


「南原さん、この度はこちらの都合を押し付け、不快な思いをさせてしまい、大変失礼いたしました。つきましては、今日一杯で南原株式会社さんとは、縁を切らせていただきたいのですが、それでよろしいでしょうか?」


「は?」

 コホン、とわざとらしく咳をして。


「実は、南原株式会社さんに頼らずとも、百坂・東都のグレーゾーンを続けることは可能なのですよ。南原さんは、どうやらこの番組がお嫌いのようですので……私たちは喜んで抜けさせていただきますね」


 南原さんは、瞬きを数度繰り返し。

 ポカンと口を開けたまま、かたまった。

「南原さんにとっても、厄介払いができる上、こちらとしても、悠さんを始め、彩花も私も少々不満に感じることがありましたので、双方にとって、それがベストだと思うのですがいかがでしょうか?」

 問いかけると、南原さんはようやく我に返ったらしく「どういうことですか?」と呻く。

 私は胸ポケットに入れていたケースから、一枚の名刺を取り出す。

「いえ、ですから、言葉の通りです。こちらの会社に話を持ちかけたところ、人気番組である百坂・東都のグレーゾーンだったら、是非、受け入れたいとのお話しがありましてね。……そのままの形での移動は難しいですから、番組の名前くらいは変えることになるでしょうけど、重要なのはそこではないはずです。この意味、お分かりですよね?」

「なっ……この……っ!」

 お喋りな口が、ようやく、詰まった。

 南原さんはぎりっと歯を噛みしめ、黙り込む。

 憤慨していた悠に笑ってみせると、理解が追いついたのか、肩をすくめつつも笑顔で返してくれた。

 ちらっと彩花を見ると、彼女も、こくりと頷いてくれる。


 ――別会社を後ろ盾につけ、南原株式会社を最良の形で抜けられるよう、手配する。


 それが、私のしたことだった。

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