第四章ー4
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彩花の『体調不良』に伴うスケジュール調整は問題なく行えた。
事務所のマネージャーと連携し、完全に休んでも問題ない仕事は謝罪をしつつ休みを入れ、特番やイベントなど、一人抜けてしまうと大幅な変更を余儀なくされるものについては、ピンチヒッターをお願いする。
ピンチヒッターに関しては、全て事情を知っている悠が買って出てくれたのもありがたかった。
「彩花、大丈夫か?」
「うん。普通に喋れば良いだけでしょ? これができなかったら仕事を続けるなんて言ってないよ」
今日は、百坂・東都のグレーゾーンの収録日。
この番組は、彩花と悠が長い時間をかけて築き上げてきた、両者のファンが最もよく知る人気番組だ。
内容としては、世の中のグレーゾーンと呼ばれる微妙な事柄に対して、女性声優二人がはっきりと物申す、というコンセプトでやっている。
開始当初は「どこまで言って良いのか?」、「言いすぎてファンが離れないか?」など、不安な部分もあったのだが、逆にそれが二人の性格や良いところを明確に示してくれた。裏表なくなんでも言葉にする彩花と、駄目なことは駄目だとはっきり言える悠にピッタリな番組だった。
デビューして間もなかった二人にとっては、固定のファンを取り込むきっかけとなった、大切な冠番組だ。
「いや、喋れるかどうかは心配してない。そうじゃなくて。南原さんだよ」
「ああ……大丈夫だよ。さすがに、必要以上に踏み込んでこないでしょ」
「だといいけど」
こそこそと、彩花と話し合う。
南原さん、というのは、百坂・東都のグレーゾーンを支えている、『株式会社南原』の代表取締役だ。
本名は、南原邦彦。
南原さんは経営者としても、声優のラジオ番組を制作、運営する会社の代表としても、腕は確かだ。
南原さんは、声優が活動する現場へよく足を運び、直接、声優とも話し合い、誰と誰を組み合わせてラジオを作ったら面白いか、視聴者の期待に応えることができるか、自分の目で見て、耳で聞いて、きちんと判断している。
どこまで本当かは分からないが、噂では、株式会社南原が持っているラジオ番組は全て、南原さんがパーソナリティーを指名し、作り上げたという話すらある。
株式会社南原は、グレーゾーンだけでなく、他にも十近いラジオ番組を持っており、その全てが、人気番組として何年も続いている。




