表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/87

第四章ー1

 予測できたことではあったが、彩花の声優活動について、ファンからは疑問の声が噴出した。

 キャラ声――声を作ること――を強要されかねないイベントごとや生放送などを、全てキャンセルしているのだ。

 公式発表は、『体調不良』。

 声が作れなくなっているため、ある意味、嘘ではないが、事情を知らないファンにしてみれば、イベントや生放送などを休む一方で、ラジオなどを休まず続けている姿は不自然に映るだろう。

 本当に体調を崩しているのならば、全ての仕事を休み、静養すべきだと考えるのが普通だ。SNSなどでは様々な憶測が飛び交い、中には、共演予定だった他の声優とトラブルがあったのではないか、などという荒唐無稽なものもある。


「こちらは私と悠さんでなんとかします。西条さんのこと、よろしくお願いします」


 北条さんからそんなメールがきたのは、西条さんがふれあい西家へ戻ってきてから数日後。約束通り、西条さんの状態報告をメールでやり取りする中でのことだ。

 傍から見ているだけでも、北条さんと悠の存在は大きかった。

 彩花と同じ事務所に所属している悠は、スケジュールの調整がしやすいこともあったのだろう。彩花が出演予定だった、イベントや生放送の穴を、ピンチヒッターとして埋める役割を担っていた。また、ラジオでも、キャラ声を使わなくて良いように、会話の流れを上手く誘導し、彩花が必要最低限の力で仕事ができるよう、常に配慮してくれていた。

 北条さんもしかりだ。

 悠のスケジュール調整を実際に行ったのは、北条さんや事務所のマネージャーさんだろうし、なにより、スケジュール調整ができたところで、関係各所から許可が下りなければピンチヒッターをすることもできない。プロデューサーとして、北条さんが各方面に働きかけたのだろう。

 北条さんが裏でどれほどの労力を費やし、調整してくれているのか、想像できた。



「あの、家に帰りたいんですけど……」



 そして、俺の方はというと。

 良いのか、悪いのか。

 誰にとっても目に見える形で、西条さんの認知症が進んだと実感させられていた。

「西条さん、すみません。今日はここで泊まりになります」

「そうですか……? 何故でしょうか?」

「ご家族の方から、今日はお仕事が忙しいとのことで、お願いがありましたので」

「はあ、そうですか」

 西条さんは、納得していないが仕方ない、といった様子で、俺のもとから去り、テーブル席に腰を下ろす。

 初日こそ、以前より笑顔が少なくなったな、という程度の印象だったが、二日目からは様子が明らかに変わった。

 認知症の中でも、有名な症状の一つ。


 帰宅願望が出ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ