第二章ー12
「西条ヨシの家族です。面会に来ました」
とはいえ、勝手に部屋に入るのもマナー違反だろう。
ナースステーションに声をかける
「あ、はい。どうぞ。ええと……」
ステーションにいた看護師さんが、「どうぞ」と言いつつ、なにか言いたげにこちらを見上げてきた。おそらく、私の図体に驚き、「本当に家族なのか……?」と、不審に思っているのだろう。
「孫の彩花です」
それを察したらしく、彩花がすっと前へ進み出て、看護師さんに名乗ってくれる。
看護師さんは私に目がいき、彩花に気付いていなかったようで、小柄な女性の登場に少し驚いた顔をする。
彩花が一緒だと分かると、看護師さんの警戒心が一気に解け、にこにこの笑顔に変わる。
この図体のせいで、奇異の視線を向けられるのは一度や二度ではない。もう慣れた。……毎度、若干の悲しさを覚えるが。
「ご案内しますね」
看護師さんは慣れた様子ですぐにステーションから出て、案内を買ってでてくださる。
「よろしくお願いします」
部屋番号まで把握しているので、案内はなくても良かったのだが、病院内の部屋の並び順まで把握しているわけではない。素直に看護師さんの厚意に甘えることにした。
西条さんの部屋は二〇五号室。一人部屋だと聞いている。
「こちらです」
看護師さんの案内で、迷うことなく到着する。
今日伺うことはご家族を通して西条さんにも伝わっているはずだが、認知症を持っている西条さんが覚えているとは思わない。西条さんからすると、突然の来訪者ということになるだろう。
西条さんは驚くかもしれないが、顔を見れば彩花のことはすぐに分かる。声を認識できなくなったといっても、孫のことを忘れたわけではない。
隣にいる彩花にちらっと視線を向けると、最愛の祖母に会えるからか、既に柔らかい笑みが浮かんでいる。
「西条さん、失礼します」
看護師さんがノックをし、声をかけて病室のドアを開ける。
私と彩花はそれに続き、病室へ入る。
病室に入った感想を一言で言うなら、『豪華』だった。
入ってすぐ、左手にドアがあり、看護師さんに聞いてみるとトイレと洗面所があるのだという。
そこから少し進むと部屋の左手壁側に西条さんが寝ているベッドがある。入口からは直接、ベッド上が見えないようになっており、プライバシー保護は完璧だ。
西条さんが寝ているベッドの横には、大きなタンスにクローゼット、さらに化粧台もあり、その上には小型のポット、壁にはテレビが備え付けてあり、冷蔵庫も置いてある。病室というより、ホテルの一室のような雰囲気だった。
私と彩花は想像以上に豪華な部屋でびっくりしつつ、横になり、休んでおられた西条さんの近くへ進み出る。
看護師さんがまず、「西条さん、ご家族の方が来られましたよ」と声をかけてくださる。
西条さんは「そうですか、ありがとう」といつもの柔らかい口調で答え、自力で起き上がられる。
看護師さんから、「リハビリをとても頑張っておられて、今では入院前と変わらないくらい動けるんですよ」と説明がある。桜川さんからその辺のことは聞いていたが、実際にお元気そうな様子を見ると、良かったと安心する。
そして、同じく、自力起き上がった西条さんを見て、安心した様子の彩花が、「おばあちゃん、久しぶり」と声をかけた。
西条さんは彩花へ視線を移し、
「……ええと? どなたでしょうか?」
戸惑いの表情を浮かべた。




