第二章ー11
「――さん! 北条さん!」
「ん? ああ、悪い。なんだ?」
「もう。そろそろ着くよ。おりる準備しないと……って、それ、桜川さんからの?」
「ああ、一応、見直しておこうかと思ってな」
視線をタブレット端末へ落とし、彩花と内容を確認する。
桜川さんからのメールだ。
西条ヨシさんの今の状況が、分かりやすくまとめてある。おそらく、彼の知り得る限りの情報を、素人でも理解できるよう、かみ砕いで文章化してくれたのだろう。
番組宛てのメールや、ファンレターなどで分かっていたが、律儀で、真面目な性格なのだと感じられた。
着信が何度もあったのは気付いていたし、おそらく、桜川さんからすれば直接謝りたいのだろうと察しはついたが、こちらからかけ直すことはあえてしなかった。
メールで状況は理解できていたし、彩花のご家族からも連絡は来ていた。直接電話をして、余計な気遣いをさせてしまうのも申し訳なかった。
「良かったな。快方に向かってるみたいで」
「うん。それはホントに良かったよ」
メールを読み直し、ほっとした表情の彩花を見て、表には出さなくても、やはり心配だったんだな、と察する。
私と彩花は今、西条ヨシさんの病院へ向かっている。
彩花は「無理にはいい」と遠慮していたが、スケジュールの調整も可能だったし、やはり、一度くらいは顔を見たいだろうと半ば無理やり、連れてきた。
「よし、行くか」
バスの到着を待ち、二人で車外へ出る。
雲一つない快晴だった。
彩花の地元、新潟へ訪れるのは、もう何度目になるか。
見渡す限り、地平線の果てまで田んぼが広がっている。遮蔽物がないため、自然の風が気持ちいい。
西条さんが搬送された病院は、田んぼのど真ん中にある。
以前、ロケで新潟を訪れた時、あちこち見て回って、どうしてこんな場所にこんな建物があるのか、と疑問に思ったものだが、きちんと理由があるらしい。
新潟は、村や集落が各地に点在し、田んぼや畑があちこちに広がっている。もちろん、新潟市内の街中にも病院はあるのだが、場所によっては、そこまで行くのにかなり時間がかかる。
そのため、なるべく、どの集落からもつかず離れずの場所に大きな病院を建てることで、緊急時にいつでも対応できるようにしているのだ。
昔、彩花に教えられたことだった。
「何号室だっけ?」
「二〇五号室だ」
病院へ入り、すぐに西条さんの部屋へ向かう。
きちんと受付をしなければならない病院もあるだろうが、ここでは家族の面会に受付は必要ない。
その辺のことは、事前に病院側と連絡を取り合っていた。
どこに彩花を知っている人間がいるか分からないのだ。
まさか病院で声をかけてくる人はいない――と思いたいが、それこそ、桜川さんの例もある。彩花の精神面を考慮して、できる限り、最大限の配慮をしておきたかった。




