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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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92 鳥の国から   カラシラサギ?   1995年8月

鳥の国から  カラシラサギ?   すずがも通信93号 1995年8月


「あれっ、チュウサギなのかな、これ、指が黄色いよ」

 なんだ、コサギの幼鳥じゃないの、と言おうとして、はたと困りました。下嘴と上嘴の基部がオレンジ色、半分から先が黒。コサギより大きめで嘴は短め、足はコサギのごく幼い幼鳥に見られる黄緑色。足指は黄色。やだ、なに、これ。

 まっ白なサギの若鳥であることは確か。若鳥の嘴が黄色いダイサギでもチュウサギでもアマサギでもないことも確か。いちばん近いのはコサギですが、コサギの上嘴がオレンジ色に見えたことはこれまでありませんでした。

 あと考えられるのはカラシラサギ。これは朝鮮半島中心に分布がごく限られており、世界でも千羽くらいしかいないと言われる種類です。保護区でも記録はあるのですが、成鳥しかみられていません。この5月末に三番瀬で成鳥が見られており、すごいねえ、繁殖するといいのにね、という話をしたばかりでした。

 さて、カラシラサギの冬羽の記載を読んでみると、なんと特徴がぴったり。体の大きさや、嘴や足が短めなところも合致しています。どうしよう。

 とうとうサギのヒナ多数に標識をつけている原島氏にSОSを出しました。

「いいんじゃないの。コサギとする決め手はないよ。カラシラサギでいいはず」

 やったーっ。この個体は額のあたりにうぶ毛を残した巣立ち後間もないヒナなのです。こんなに幼い個体が海を越えてきたとは考えにくく、新浜鴨場で繁殖した可能性がじゅうぶんあるというわけです。7月9日のことでした。

 その後もほぼ毎日このカラシラサギの幼鳥と思われるサギは餌をとりに干潟に出てきています。でも‥‥‥そっくりなのがなんと4羽もいます。それも、ぜんぶがコサギの幼鳥より大きいというわけではなく、むしろ小さめだったり、嘴も横や下から見ると確かにオレンジ色がかっているけれど、上からは基部が黒く見えるものもいます。どうしよう。

 もしかすると、カラシラサギとコサギのペアから生まれたヒナたちなのかもしれません。それとも、みんな「ちょっと変なコサギ」なのかなあ。

 さて、7月9日にははやばやとチュウシャクシギ16羽、オオソリハシシギ3羽、メダイチドリ3羽、おまけにきれいな夏羽のコオバシギまで1羽見られました。ひさびさに干潟に鳥がいるうれしい日でした。

 ようやく梅雨も終わりに近づき、お日さまが見られるようになりました。野鳥病院の退院びよりです。ツバメ、イワツバメ、スズメたくさん、メジロ。ムクドリやキジバトも放鳥を待つばかり。

 7月13日のお昼どき、わが家にもどって昼食を食べていると、窓の外でけたたましくメジロが鳴く声がします。朝早く放したメジロが猫にとられたのじゃないか、と大あわてで外に出ると、なんとわが家の悪猫「オルカ」の鼻先、1mもないところでメジロが警戒声を上げているのです。「猫だ、猫だ、猫だよう!」オルカの方も目をみはって「メジロだ、メジロ」とばかりにニャーニャー鳴いています。あぶない、あっち行け、とメジロを追いました。なにもわざわざうちの猫のところに来て大さわぎをしなくてもいいのに。放したばかりの若鳥のあぶなっかしさ、今ごろはどうしているのかしら。



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