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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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80 鳥の国から  さんま一気のみ  1994年4月

鳥の国から  さんま一気のみ  すずがも通信85号 1994年4月号


 しとしとと降る冷たい雨の中、こたつにおさまって、猫をひざにして書きものを‥‥‥ちょっと前に最高のぜいたく、と書いたような気がするけど、提出期限をとっくにすぎて「ごめんなさい、あと1週間!」と深く深くおわび中の報告ともなると、そんな優雅なこと言ってられない!おまけに明日出す短い原稿が2つ、あと3日するとすずがも通信の編集の日で、こまかい事務報告もいれると仕上げなくちゃいけないのが3ページ分‥‥‥

 パニック状態のノートパソコンの前に、なんと大きなクモがすーっと下りてきました。冬中ずっと、あっちこっちと場所を変えながら天井に止まっていたオニグモです。室内で越冬するのは、外より暖かいけれど、決してよい条件とは思われません。もともとあまり餌が多くないから、越冬に十分なほど脂肪を蓄えることもできなかっただろうし、室温が高い分だけ代謝が早く、消耗してしまうのではないでしょうか。たいていは2月ごろ、かさかさにいhからびてぽとんと落ちてしまいます。このクモもきっとあえない最期をとげるだろうと思っていました。しかし、ちゃんと糸をひいておりてきたではありませんか。どうしようと考えたあげく、玄関から外に出しました。玄関灯があるので、わが家のまわりではいちばん実入りが多いはず。もっともヒキガエルが来ていることもあり、危険も少なくありません。せっかく4ヶ月近い絶食に絶えて冬を越えたのだから、情もうつります。無事に生き延びてほしいなあ。

 冬中ずっとのおつき合いと言えば、暖かくなってから放鳥しようとして野鳥病院の室内で放し飼いにしているヒヨドリたち。日増しに性格が悪くなる一方。もともと気の強い鳥ですが、立春が近づくころから、まず人気者のオナガを目の仇にして、袋叩きにしてしまいました。ねじ伏せられ、つつきまくられてくちゃくちゃになったオナガは、やむなく小鳥室に避難させてあります。次はヒヨドリどうしの争いになり、いちばん強い「黄」ちゃんが「緑」や「オレンジ」をやっつけて、プールの水づけにしたり、餌入れの中でとっくみあいをしたり。春めいてくればくるほどトラブルはふえるはず。6羽全部、一刻もはやく無事に放してしまいたい。こんどぽかぽかした晴天になったらリングをつけて放すぞーっ。

 サンマが安かったので、一箱50本買い込みました。カワウに丸ごとやっています。大きくてりっぱなサンマを、よいしょ、と重たそうにくわえなおし、頭からぐいぐいと痛快丸のみにするところはなかなかのみもの。長い首をうまく利用して、しっぽまですっきり口にいれてしまいます。一度セグロカモメにやってみましたが、首をいっぱいにのばしてもしっぽが残り、食道が背中の方へと曲がるところを通すのがひどくたいへんそうでした。セグロカモメのうちの2羽ももうすぐ放せます。

 なんのかんのと言っても、あたりにはもう春の気配がいっぱい。きびしい季節をしっかり乗り切った生きものたち。冷たい水の中で産卵中のヒキガエルのカップル。

 提出期限のおそろしさなんて、小さい小さい。いずれは乗り切れるはずなんだもんね。



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