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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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77 鳥の国から  アシ原の中で  1993年12月

鳥の国から  アシ原の中で  すずがも通信83号 1993年12月


 黄色く枯れはじめたアシ原の中で、しきりに音がしています。がさ、がさっ、かさかさかさ、パチパチッ。見ているとアシの穂先がゆれています。小鳥がパッパッと体を動かすときのリズムです。チュウリーンと大きく声をひびかせて、穂先に一羽止まりました。オオジュリン!

 おちついた枯れアシの色をしたこの小鳥。そんなに目立つ鳥ではないけれど、冬のアシ原ではいちばん数の多い種類ではないかしら。ちょうど移動の最中なのか、アシ原というアシ原にあふれかえっているようです。11月10日は干潟の調査で、特長(ももまである長靴)をはいて、やわらかい干潟の泥の中を苦労してこぎまわりましたが、どこに行ってもアシ原から聞こえてくるかすかなざわめき、さざめき。何羽くらいいるんだろう。

 高校生のころからバンディング(鳥類標識調査)をはじめ、今ではりっぱな社会人になっているバンダーさんたちが、今年は熱心に北池で秋の調査を続けています。10月末から捕獲されはじめたオオジュリンは、11月11日までにもう1000羽もとれたそうです。この秋のシーズンに北海道南部で標識されたばかりの鳥もまじっていたとのこと。これからもどんどん移動して行くのでしょう。それにしても、北池をはじめとする保護区のアシ原を利用しているオオジュリンは1万羽ではきかないかも。 

 もう一つ、何とツリスガラの捕獲がもう30羽をこえたとのこと。何をかくそう、私はツリスガラという鳥を野外でちゃんと見たことがない!この春、どう考えてもツリスガラとしか思えない小鳥の小群が飛びたったうしろ姿を見ました。捕獲されたツリスガラは何度も見せてもらっています。でもやっぱり野外で見ないと自分の「ライフ・バード」(野生の状態で観察し、ちゃんと識別できるようになった鳥のこと)にできない。

 ツリスガラは図鑑で見ると、たいてい「九州地方で越冬」と書かれています。それ以外の地方では、たいへん稀な珍鳥だったはず。それがここ何年かの間に越冬地がぐんぐんひろがり、3年ほど前に「大阪ではアシ原の冬の普通種になりましたよ」とうかがったばかり。

 浦安での初記録が1988年秋。翌年春にバンディングで捕獲された4羽を皮切りに、毎年確実に記録されるようになりました。今年の4月には北池で20羽あまりが同時に見られています。そしてこの秋。標識された鳥のトップはもちろんオオジュリンで、アオジ、スズメ、カワラヒワなどがこれに続きますが、この次くらいがなんとツリスガラ。なんでも小櫃川や谷津干潟のあたりでも記録されているそうで、もうふつうの冬鳥になってしまったのかもしれません。この種類が何故に爆発的な増加だか、越冬地拡大だかをなしとげつつあるのか。

 それにしても、日本でふえた鳥はカラスとドバトだけではないと思うとちょっとうれしい。

 セイタカアワダチソウの黄色もウラギクの薄紫もナンバンギセルの赤紫もみんな種子と交代。いつも一本だけよくめだつナンキンハゼの木の葉がみごとに紅葉し、アシも日ごとにベージュ色に変わっています。枯れ野の上をかすめて飛ぶチュウヒ。カモがさっぱり入らないのはさみしいかぎりですが、晩秋の鳥の国もなかなかいいものです。


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