75 鳥の国から 雨続き 1993年8月
鳥の国から 雨続き すずがも通信81号 1993年8月
いやあ、まあ、よく降りますねえ。今年ほどちゃんとした梅雨はちょっとおぼえがないくらい。5月から6月はじめまでほとんど雨がふらず、日照り続きどころか干ばつという状態だったのがうそのよう。6月はじめには北池がからから、新池もからから、湊新池は砂漠。行き場のないカイツブリたちが保護区の海に20羽近くも群れていて、どうなることかと心配していたほど。それが一転してこのじっとり天気。禽舎用の干し草が完全に底をついてしまい、2日、いや丸1日でもいいからからっと晴れた日がほしい、そうすれば刈った草をとりこめるのに、と空を見上げる毎日。
それでも雨続きならではのおもしろいこともあります。わが家(観察舎管理人棟)と傷病鳥舎の間の芝生にキツネノエフデ(茸の一種)が生えました。「竹林にふつう」と本にあります。もとは竹やぶだったので、ふーん、と納得。カニ足かまぼこみたいな、なんだか頼りないキノコです。
掃き出し窓のあたりの畳の上を走るアリさん。ふと見ると、なんと白くてやわらかそうなさなぎをどんどん運び込んでお引越しの最中。このアリ、種類はよくわからないのですが、何十メートルも続く行列をなして移動し、板や石の下などに一夜にして全群ひっこしてきてしまうのです。禽舎内に数千匹のキャンプができることなどしょっちゅう。窓敷居のコロニーを認めたら、次はデスクの下かなんかに大集結してしまう!!ほうきで掃き出し、最後は殺虫剤で大虐殺。今のところ、第2波の襲来はないようですが‥‥‥
楽しみにしていたセイタカシギの繁殖。順調に次々と5組まで巣を作ってくれました。ところが5月23日の日曜、なんと全部の卵がなくなってしまったのです。どうやら保護区で巣を作ったハシボソガラスの犯行のようで、1巣4個については卵殻だけが残り、他の巣は根こそぎ卵が消えました。親鳥たちは、この日の夕方そろって観察舎正面の鈴が浦の干潟に下り、ひどく興奮して鳴きかわしながら、西に向かって飛び去り、それ以後姿を見せません。東京都の中央埠頭の埋立地で20羽が見られているとのこと。悲劇にあった保護区を離れ、新天地を求めたのでしょう。今度こそ無事にヒナが育つことを願っています。
野鳥病院は例によっててんてこまい。今年はオカヨシガモ7羽を含めて45羽のふ化後間もないカモのヒナ(親とはぐれたり、親が死んだり、犬や猫に追われたり、住宅地にまぎれこんだりしたもの)が入院。このうち少なくとも29羽はなんとアヒルの血がまじった混血児のカルガモでした。カルガモという種類が存続できるのか、心配になってしまいました。
ふなばし海浜公園から「拾得物」として届けられたヒナ5羽。巣ごとそっくり置いてあったとのこと。うぶ毛はあるけれど目も開かない状態で、種類がわからない。モズだ、ヒヨドリだ、ヒバリだ、と諸説とびかううち、2日目くらいから少しずつ羽色が見えてきて、ハクセキレイとわかりました。ハクセキレイは建物や構造物に巣を作ります。もしかすると、しばらく置いてあった車を使おうとしたら巣ができていたという事情だったのかも知れません。ダニがふえて大騒ぎしたりしましたが、5羽とも元気。そろそろ巣立ちの時期です。




