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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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50 水車ニュース  水の色  1990年10月・同 12月

水車ニュース  水の色  すずがも通信64号 1990年10月


丸浜川にコガモが戻ってきました。さっそく岸近くで泥の表面をすすりこんで、しきりに餌をとっています。藻類の堆積を食べるようですが、泥の中にはイトミミズや赤虫もたくさんいます。どちらが主食なのでしょう。

 この夏の「水色モニター」は、塩浜中学2年の斉藤一匡くんが引き受けてくれました。7月10日から8月10日までの32日間、1日も欠かさずに、朝6時ごろから塩浜橋の丸浜川側と猫実排水機場側の両方、それに水車せせらぎ2・3号のところと3カ所も記録をとりました。こんながんばり屋さは初めてです。

 雨がほとんど降らなかった今年の夏。さすがに去年よりも水の状態はぱっとしませんでしたが、4年前までは毎日まっ黒で、つんと鼻をつくきつい臭いが漂っていた猫実排水機場でも、水が黒くなった日はごくわずか。

 面白かったのは、4年前はポンプ排水が何日か行われないでいると、水がだんだん黒ずんで、やがてまっ黒になったものですが、今年は逆に最初は緑、そのうちにだんだん透明度が増して来るという状態が何度か見られたこと。そういう時は水の中にミジンコがおびただしく見られます。これも斉藤くんの観察では、緑の水の中にミジンコを入れておくと、ミジンコがどんどん植物プランクトンを食べてしまうそうです。

 もうひとつ。藻類の大発生で、水は緑になったり茶色になったりしますが、緑の時は塩分濃度が低く、茶色の時は逆に高いことがいつも見られました茶色は珪藻類、緑は藍藻類か緑藻類のはずです。水の色だけ見ていても、ずいぶん色々なことがわかると感心しました。




水車ニュース  すずがも通信65号 1990年12月


 年1回の干潟の底生動物調査を秋にやっています。場所は「うらぎく湿地」の中が2カ所、観察舎のほぼ真正面にあたる「セイゴ水道」で1ヶ所の3ポイント。今年は4回目にあたります。

 出てくる種類はだいたい決まっていて、ゴカイ類と汚れたところに多いミズヒキゴカイ類が何匹か、アサリかオキシジミといった二枚貝が少し、付着性のホトトギス、それに泥の表面で生活するごく小さな巻貝類(カワグチツボ、エドガワミズゴマツボ、カワザンショウガイなど)などです(註)。ヨコエビ類やイソギンチャク類が見られることもあります。個体数や動物体の全量はとても少なく、たとえばみそ汁の実にはなりそうもない小さなアサリが1つ入っていれば、全重量はそれでほぼ決まり、という状態です。

 この4年間でひとつだけはっきりした傾向があります。ごく小さな巻貝、特に1.5ミリほどの丸っこくて縞のついたエドガワミズゴマツボ(註)がふえています。

 ウラギク湿地には、丸浜川から揚水した水の一部が流れ込み、また新池で浄化された水も流れ込んでいます。エドガワミズゴマツボの増加は、あるいはこれと関連があるかもしれません。でも、砂まじりのセイゴ水道の底生動物のほうが常に多いことを考えると、表面だけでも砂を足して(干潟の生物の9割は表面から5㎝までの泥中で暮らしているそうです)、干潟の状態を改良する方が有効であるのではないでしょうか。


(註)エドガワミズゴマツボは、後にウミゴマツボとされる。


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