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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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46 鳥の国から  ダイゼンのごちそう  1990年6月

鳥の国から   スズガモ通信62号  1990年6月


 あたりに目をくばりながら慎重に歩いていたダイゼンが、まるでフェイントをかけるような動作で、振り向きざま、干潟の泥の上の何かをくわえました。そのままじりじりと引き出しにかかります。背伸びしてようやく穴から引っ張り出したのは、縮んでからもたっぷり10㎝はありそうな大きなゴカイでした。するするっと呑み込んでしまうと、またゆっくりと歩きはじめます。足首まで泥につけ、潮だまりの水中を特によく見ています。

 5月21日の朝、やかんのお湯がわくのを待つほんの7,8分の間に、このダイゼンは大きなゴカイを2匹、5㎝ほどの中くらいのを4匹、1㎝ほどの何だかわからないものを5匹も食べました。白と黒のきれいな夏羽に衣替えしてみるからに渡り直前の栄養補給という様子でした。この会報がお手元に届くころには、もうアラスカに着いているかも知れませんね。


 セイタカシギは、今年は新池では巣を作っていません。そのかわり、東会長さん宅前の金魚池で卵を抱いています。あいにく東家からは見えない位置だそうですが、ヒナがかえるのが楽しみです。新池はカダヤシが増えたためか、ユスリカは減りました。セイタカシギが入らないのは餌が少ないためでしょうか。それともアシがしげって見通しが悪くなったためでしょうか。

 カワセミはたぶん新浜鴨場でヒナをかえしたのではないかと思います。5月12日、とうとう魚をくわえて飛ぶところを見ました。それまでも、鴨場から出てくる時にはツ、チーッと鳴きながら飛ぶのに、帰りは無言だったので、餌をくわえていたのではないか、などと気にしていたのですが、動きが早いのでなかなか確かめられませんでした。行徳でカワセミが繁殖していたのはいつごろまでなのでしょうか。もしかすると、二十年どころか四半世紀ぶりの繁殖成功になるのではないか、と期待でいっぱいです。


 5月21日の午後、船橋市浜町の葛南土木事務所からカルガモの親子が届きました。ヒナを11羽も連れた母親が迷い込んだとのことです。親鳥が飛び去ってしまうとおおごとで、約2か月をかけてヒナを育てることになるのですが、幸いにも親子一緒に捕獲されたので、新池に持って行きました。かなへび島まで箱ごと運んで、そっと箱を横にし、ふたを開けました。まず顔を出した親鳥が島から水面に下りると、ピイピイ鳴いていたヒナたちが1羽、また1羽とぴょんぴょん飛びおります。切り立った島の斜面を転げ落ちたり、最後の1羽などは仰向けにひっくり返ってしまい、じたばたもがいていて、はらはらしましたが、すぐにみんな親のまわりにぴったりかたまって、しげみの中に泳ぎ込み、姿を消しました。

「いやあ、ああいうところを見ると、ほっとしますね。苦労して連れてきたかいがありましたよ。」葛南土木事務所の方が喜んでおられました。

 なお、この親鳥は、羽の色から見ると、若干アヒル(マガモ)の血が混じっていたようです。



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