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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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45 水車ニュース 1990年4月  水車が回って4年 丸浜川は今

水車ニュース  すずがも通信61号  1990年4月


 水車、せせらぎ1・2・3号も故障でストップした時期が約1か月。その間、丸浜川はいわゆる「どぶ川色」-なまり色をしていました。時には観察舎の前でどぶくさいにおいが感じられました。せせらぎ1号が動き出すと、間もなく水は植物プランクトンの大発生を示す緑色になりました。酸素が供給されないと藻類の発生もおさえられるらしい、という推測は当っていたようです。

 3月18日になって、ようやくせせらぎ2号が動きはじめました。これからは、藻類を食べる生きものが水中にふえて、緑色の水がもっと透明に近くなってくる予定なのですが、予想どおりになるでしょうか。楽しみです。

 水車がとまっていると、底生動物もあまりふえませんし、水質も悪くなってきます。故障のせいで、実験の「追試」をやってしまったような気がします。

 丸浜川では、ほとんど毎日のようにコガモが40~100羽、ハシビロガモが1~数羽、オオハシシギが2羽入って餌をとっています。たいへんなことだと思います。1986年3月、せせらぎ1号を浮かべた時の写真をしばらくぶりで見ましたが、岸の泥はぎとぎとした油っぽいまっ黒な色をしていました。今でも空気や日光にふれない水底の泥は真っ黒ですが、岸ではこんな色は見られません。いつの間にか、ふつうの泥の色に戻っているのです。生きものが住めるようになっていることに、あらためて驚きました。




水車がまわって4年、丸浜川はいま・・・・  すずがも通信62号  1990年6月


 さあさ、丸浜川にいらっしゃい。寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。

 このところ、雨が降って排水されたあとの丸浜川のきれいなこと。水底がくっきり見えます。透視度1メートル近く。澄んだ水に3ミリもある大型のミジンコがぎっしり泳いでいるところなど、ほれぼれするほど。猫実排水機場の水でさえ、緑や灰色の日が多く、ひところのようなまっ黒な水はなかなか見られません。イトトンボやギンヤンマも珍しくなくなりました。そこへマスクラットのつがいが泳いできたりすると、もう最高!


 それにつけても、心配なことがいくつか。まず、江戸川広域下水処理場の処理水のこと。昨年十月から月1回ずつ、A:浦安の猫実川、B:猫実排水機場遊水池に流れこむ排水路(勝手に「福栄川」と呼んでいます)、C:丸浜川(塩浜橋から)、D:処理場排水、E:湊排水機場遊水池(ここのみ調査日が違う)と、排水ばかり5測点の水質を見ています。例によってパックテストですから、厳密な数値ではありません。この5箇所の水で、どこが一番汚れているでしょう。

 CODについては、処理水がたいてい一番少なくなっています。排水基準である20ppmの範囲に収まる時もあります(パックテストは「アルカリ性過マンガン酸カリウム法」なので、得られた数値を2.4倍する必要があります)。

 リン酸については猫実川が最悪で、処理水がこれに次ぐことが多いようですが、時々順位が変わります。一方アンモニアについては、処理水がダントツの最悪。たいてい30~40ppmと、他のところの数倍に達しています。丸浜川はCОDが処理水に劣りますが、どの項目についても、概して他の排水より状態がよくなっています。見た目やにおいはかならずしもよくはないのですが。

 処理場の処理水が、見た目はきれいなのに、未処理の排水とそれほど状態が変わらないか、むしろ悪い場合があるというのは、ショックでした。処理水の量は毎年ふえるわけですから、海の状態がどうなるか、気がかりです。

 3月23日夕方、下水処理場雨水吐(ちょうど「せせらぎ1号」のところ)から流れ出る水が毒々しいオレンジ色になっていて、仰天しました。知らせてくれた新藤さんの話では、前にも何度か見たことがあるそうです。まるでさび止めのペンキのような色。正体は処理した泥を固めるための塩化第二鉄。二度と流出しないよう注意するとのことですが、塩浜橋の近くまでまっ赤になった川の水は、とても気持の悪い眺めでした。何しろ、pH1というとんでもない薬物です。「赤さび色」の正体に早く気付くべきだった!


 くさくなくて、鳥がいるのが当たり前になってきた丸浜川。見るのもいやだったどぶ川がずいぶん変わったものです。いつか、きっときれいになりますよね。




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