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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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37 鳥の国から  タイトル防衛なるか  1989年4月・6月

チュウヒとハイイロチュウヒ


 ホー ホケペチョ、ホー ホケキキョ。

ウグイスの声で目をさます、というのがこのところのぜいたく。ひいき目なのかも知れませんが、観察舎南西の竹やぶを根城にしているウグイスは、このあたりで一番の美声といううわさ。わが家の窓のすぐ外のマテバシイやヤマモモにもよく来て鳴くのです。割合ものおじしない鳥で、子供たちが木の両側であっちだ、こっちだと言い合っていても、平気でホー ホケキョ。とうとう私もウグイスのさえずる姿を見ることができました。生まれて初めてです。観察舎正面玄関から事務室のあたりには、また別のウグイスがいるらしく、こちらはまだホー ホキョとかホケコという感じでさえずっています。


 2月28日、早々と抱接しているヒキガエル(いわゆるおんぶがえる。産卵の時のスタイルです)を見ました。それから数日の間にたぶん3~4組の産卵しているつがいを見ました。餌場の池のところです。卵は順調に発生していたのですが、オタマジャクシの形に育ったのに、泳ぎ出すのは見られませんでした。丸浜川の水位が高く、何度か川から水が入っていたので、あるいは塩分でやられてしまったのかも知れません。


 カモが少ない割にはタカ類がよく見られ、なかなかきれいな雄のチュウヒが時々姿を見せます。よく似たチュウヒとハイイロチュウヒは、ふつう腰のところが白い方がハイイロチュウヒと言って見分けています。ところが、この雄のチュウヒは腰がまっ白で、翼の一部と尾はきれいな灰色。タカ類はふつう雄の方が小柄なので、この雄も飛び方が割合軽快で、そんなところからもやや小型のハイイロチュウヒと混同しがち。「腰が白いチュウヒ」が飛ぶたびに要注意です。ちょいちょい出てくるハイイロチュウヒは、翼の裏のしまもようや、尾羽の太い縞でちゃんと見分けられるのですが、腰の白はむしろ小さめ。いずれにせよ、そろそろお別れの季節なのがちょっと残念です。

 今年はセイタカシギが江戸川方面で越冬し、3月13日には湊排水機場の遊水池堤で30羽もの群れが見られました。つがいで行動したり、なわばり飛行のような行動を見せています。繁殖はどうなるか、期待でいっぱい。


 勝手口のカンナが、今年はとうとう緑の葉を残したままで冬を越してしまいました。11月まで花をつけていて、普通は霜枯れするのに、茎の一部と葉の何枚かが緑色。この分では5月ごろから咲くかも。冬ずっと暖かだったせいで、どうも春を味わう楽しみが薄れてしまったみたい。心のアンテナにみがきをかけて、張り直さなくっちゃ。


(「すずがも通信」55号・1989年4月)


<end>


1-6-056a.txt

<056>

タイトル防衛は難しい!


 今年もセイタカシギが卵を産んでくれました!

 なにげないこのひと言に、万感をこめたつもりなのですが。とうとう、ようやく、やっとのことで、信じられないことに(?)、卵を産んでくれたのです。

 いやあ、まちがいなく産むと思っていたのですよね。昨年、新しい池であれほど続々と巣を作ってくれたでしょう? だから、今年も作ってくれるのがあたりまえだと、誰もが信じきっていたわけです。ところが、ところが。今年は冬にいなくなるということもなく、3月に入ってからは、毎日30羽近い(同時最大数は32羽)セイタカシギの群れ(!)が北池またはどぶ池(湊排水機場の遊水池のこと)で見られていました。そして聞き慣れた例のケレッ、ケレッという警戒やなわばり争いの声も、4月なかばから毎晩、わが家ばかりか、金魚池前の東家でも聞かれていました。それなのに、ゴールデンウィークも終わったというのに、北川先生の必死の搜索もむなしく、巣ひとつ、卵一個見つかりませんでした。

 5月の10日ともなると、さすがにあせってきます。昨年は4月30日から営巣、産卵が始まり、親鳥たちの警戒ぶりも相当。ところが今年はいたって平静。タイトルは奪取より防衛の方がずっとたいへんというのがよくわかりました。

 池でつがいを何度か見ましたが、すぐにさっと飛び去り、そのまま帰ってきません。今年はだめか、とあきらめかけたこの日、上池の中央土手よりに新しく作られた島で、まるで産みすてられたように1個だけぽつんところがった卵が見つかったのです。

 5月12日、こぬか雨の中を、翌日のバードウィーク観察会の下見に出かけました。島にすわっていたセイタカシギがあっさりと静かに飛び去ってしまい、5分後に同じ道を戻る途中にのぞいても姿が見えなかったので、確かめに入ってみました。池にふみこんだとたん、いつの間に帰ったのか、2羽の親鳥が無言のまま飛び立ちました。去年だったらどんな大さわぎになったことでしょう。急いで巣に近づいて、巣の形がきれいにととのえられ、2個の卵がきちんと並んでいるのを見て引き返しました。

 5月13日現在、上池で1つがいのみが営巣。午後2時ごろ、ちょうど3つ目の卵が産み落とされる瞬間を北川先生が観察されました。あとの30羽はどこでどうしているのでしょうか。元気でいればそれでいいのですけど。


 「インドひとり旅」でおなじみの鈴木希伊さんにお願いして、のらしろ猫どもの避妊手術(雄1、雌2)を終えました。次に予定していた“カスミ嬢”、発情の様子など気ぶりにも見せないペチャンコ猫だったくせに、手術予定の週から突如おなかがふくれて、4月4日に出産。目下わが家のうち猫は5匹! こういうことは鳥の国では許されてはいけないのです。おまけにカスミそっくりのミケチビ猫は、ガスミと異名をとった母親なみのオナラをするのです。猫5+犬2同居のわが家は環境ビデオのような、というか、発狂しそうな、というか、まあ決して退屈しない状態にあります。オナラをしないクロチビオスもいますので、どなたかもらって! 



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