表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
36/100

36 鳥の国から・水車ニュース  アンモニアの雨  1989年2月

今日もウグイスは無事かしら


 庭先に生ごみ置き容器’(コンポスター)があります。直径80cm、高さも同じくらいですが、毎日わが家と観察舎の生ごみを入れていても、いっぱいにはなりません。本当は堆肥用で、花づくりのひまがなくなって以来、もっぱら生ごみを入れるだけ。でも、おかげでごみ出しの手間がいりません。土のある暮らしのぜいたくです。

 このごみ置き場のまわりはごちゃごちゃしたやぶで、クコや笹がしげっています。この冬、雌のウグイスが1羽、毎日姿を見せるようになりました。わずかに残ったクコの赤い実がお目あてなのでしょうか。来てくれるのはうれしいのですが、このあたりは猫どもも大すき。のらしろども(黒白ぶちの“おっかさん猫”が産んだまっ白な3匹の子猫が順調に育ってしまって、雌2匹、雄1匹で遊んでいます。何とかして手なずけ、人間の管理下において鳥をねらわないようにしようとけんめいですが、根強い人間不信がなかなかほぐれません)をはじめ、前科者の黒猫“ススム女史”、ドジ三毛の“カスミ嬢”、ぱっと見には高級そうな全身グレーでやたら働きもの、夜になると干してあるパンや枯れ葉、アルミ箔、ゴキブリなどをせっせと運んでくる“ケムリ嬢”もこの辺でうろついています。ウグイスの地鳴きを聞くと、ああ、今日は無事だったか、とほっとする毎日。


 カモがまるで寄りつきません。カウントの楽なこと。保護区全体でスズガモがやっと十数羽、カモの合計が3000~5000羽程度。塩浜沖(三番瀬)には合わせて10万羽近くいるそうです。湾岸道路、京葉線、高圧線、倉庫群を越えてまでカモたちが入ってくるには、それなりのわけがあるはずで、今の保護区にはやはりそれだけの魅力はないのだろうと思います。

 こうなると、餌場のカモメやゴイサギだけが頼り。一日20kgの魚のアラ確保に大さわぎです。1回に5kgくらいを餌場に出すのですが、バケツから餌入れに空けて、堤防をのぼってから振り向くと、がつがつしたセグロカモメの群れがあらかた平らげてしまっています。ものの3分ともちません。そんな時、餌場に猫どもが出てくると、カモメがいくらか遠慮して遠まきに見ているので、餌のなくなり方が遅いのです。「あ、どら猫が鳥の餌をとっちゃった」見るとうちの猫だったりして、赤面しています。


 1月6日、松の枝に止まってこちらを向いているオオタカの若鳥を見ました。鋭い黄色の目、ひきしまった顔つきは新春にふさわしく、見慣れたチュウヒとはひと味違うりりしさでした。ハイイロチュウヒやノスリも時々姿を見せます。


最長老・ハゲ


 1月16日、保護飼育している鳥の最長老、キジバト雄の“ハゲ”が死にました。1976年成鳥として入所、14歳にはなっていたはずです。両翼骨折ながら元気はよく、若い頃は盛んにデーデデーポーポウと歌って雌に言い寄り、産卵や抱卵も数回見られましたが、ヒナはかえりませんでした。雄バトと見ればけんかをふっかけるので、散々つつかれて頭皮を何度もはがされ、とうとうはげてしまったのです。長い禽舎生活ながら、それなりに充実した生涯だったのではないでしょうか。


(「すずがも通信」54号・1989年2月)


水車ニュースより抜粋


1989年2月 すずがも通信第54号


アンモニアの雨がふる


 雨って、きれいですよね。すきとおっていて、雨上がりの葉先にたまったしずくは、まるでダイヤモンドのようにきらめくでしょう?冬の氷雨は冷たいけれど、からからの大地には待ちどおしい贈りものです。よごれた水も、雨が降るといくらかきれいになるはずですよね。

 1月7日から8日にかけて、ひさしぶりに雨がふりました。まとまった雨らしい雨は11月29日以来40日ぶりのことです。干上がって海水を入れている北池もちょっと息がつけたことでしょう。

 絶好のチャンス。中華どんぶりに雨水をためて、パックテストで水質を調べてみました。なんとまあ、この時の測定値では、雨水中のアンモニアはこともあろうに8ppmにもなったのです(測定者 森田昭次さん)。ネスラー試薬の入ったパックテストのチューブはほとんど茶色に近い色になっていたので、もっと濃度が高かったかもしれません。あの汚れた丸浜川の水に匹敵する数値です。

 あまりにもものすごい数値に仰天してしまって、1月9日に新池の水をとってきました。いつもは上池よりずっとアンモニアが少ないはずの下池で、6ppmというこれまでの最高値が記録されました(丸浜川からの流入水は3ppm)。雨が降るとよごれた水がきれいになるどころか、反対にアンモニアの濃度が高くなってしまったのです。こんなことってあるのでしょうか。

 1月13日にも雨がふりました。この時の雨水のアンモニア量は2.5ppmとだいぶ低くなっていました。それにしても、行徳地区の畑には、窒素肥料をやる必要がないのではないでしょうか。信じられますか?ショック!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ