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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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34 よみがえれ新浜 二年半のあゆみ その2  

よみがえれ新浜 二年半のあゆみ その2


 1986年に無事に2年間の本研究助成対象となることができました。500万円の助成金で、行徳鳥獣保護区に浅い池を造成し、丸浜川の水をひく実験が始められたのは、1987年8月のことです。

 池は2面合わせて約1ヘクタール。池というより、水田のイメージです。もともと水田には下肥えを入れて肥料にしていました。だからといって、泥が酸欠になったら稲も弱ってしまいます。水田はもっとも理想的な下水処理施設だと言われ、微生物に始まり、ミジンコやボーフラなどを経て、魚や鳥にいたる食物連鎖の過程と植物の生育で、水の汚れは消化されて行きます。逆に水の汚れは栄養源であり、うまく使えば水鳥の餌となり、誘致に役立つはずです。

 酸素をふきこみ、酸素を必要とする生物をふやすための引きがねとして水車をまわしました。その水を浅い池に導くと、どんなことが起こるでしょうか。

 浅い池では底まで酸素や日光が届きます。有毒なアンモニアや硫化水素を出す嫌気性のバクテリアは、好気性のバクテリアと交替し、酸素を必要とする生物の食物連鎖の成立が可能になります。

 池に水を入れるが早いか、トンボが産卵にきました。ユスリカの蚊柱がたち、蚊柱を追ってツバメやアブラコウモリが飛び回りました。やがてカモやセイタカシギが定着し、ウミネコやサギが水あびにきました。あきれるほどの早さです。

 丸浜川からポンプでくみ上げられ、延々350mの塩ビパイプで池にひかれた水は、まず浅い上池に入ります。上池の中で窒素やリンは植物プランクトンにあらかた使われて、10分の1くらいになります。そして、くねくねと細長く掘られた水路を通って下池に流れこみ、更に浄化が進みます。


 この春、何と8つがいものセイタカシギがこの池で巣をつくり、卵を抱きました。ヘビにとられたらしく、4つがい、各2羽のヒナがかえっただけでしたが、8羽のヒナは無事に飛び立って行きました。子育て中ずっとセイタカシギはこの池を中心に生活し、もちろんヒナたちは池の中だけで餌をとって育ちました。

 セイタカシギの繁殖中、他の鳥は手ひどく攻撃されてなかなか巣が作れなかったようです。6月末になってから、オカヨシガモの親子(ヒナ6羽と雌親)が発見されました。本州ではまだ2回目という貴重な繁殖例です。この他、カイツブリが2つがい巣を作り、少なくとも1組は4羽のヒナをかえしました。またカルガモの親子(ヒナ4羽)も見られ、巣やヒナの確認はできなかったものの、バン、イソシギ、コチドリが繁殖期間にずっと定着していました。この他、最近たいへん少なくなったオオバンやマスクラット(大型の水生ネズミ)が時々入っています。タヌキ(数年前から保護区に住みついているもの)も姿を見せました。


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