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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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31 鳥の国から・水車ニュース オカヨシガモのヒナ確認  1988年8月

 むしむしと暑くて、ようやくこよみどおりの季節が戻ってきたようです。寒かったり暑かったり、わけのわからない時期が続いたので、夏らしい日、梅雨らしい日が何となくうれしいのです。そろそろちゃんとした雷雨を期待しているところ。たいひに生えたキノコがひからびてしまいました。

 セイタカシギの成長、オカヨシガモのヒナ発見で、繁殖期の大役ははたし終えたような気がします。でも、ああ、何たること。今年はまだカルガモも、キジもカイツブリも、ヒナを見ていません。ヨシゴイなど親すらいません。コアジサシの姿をほとんど見なくなりました。珍しい水鳥の繁殖はうれしいことですが、ごくごくありふれていた鳥たちが次々に見られなくなることのおそろしさ。


姿を消したコアジサシ


 中でも心配なのはコアジサシ。6月の初めころまで、保護区の干潟で60羽ほどの群れがいつも見られ、さかんに求愛行動(プレゼントの小魚を雌に渡す)を見せていました。ふつうなら、とっくに卵を生みはじめる時期です。浦安の理立地にハシボソミズナギドリを放しに行った時、道ぎわの土盛りをしたところに巣がいくつかあるのを見つけました。でもわだち跡、人や犬の足跡がいっぱいで、とても大きなコロニーにはなりそうもありませんでした。間もなくコアジサシは姿を消し、あの涼しげなダイビシグもほとんど見かけなくなりました。江戸川放水路でも見られないそうです。この付近での繁殖をあきらめて、どこかへ旅立ってしまったのではないでしょうか。


 オカヨシガモやセイタカシギに加えて見る機会がふえたのはイワツバメ。原木のコロニーでの数がずいぶんふえたのでこちらまで羽をのばしているのでしょう。今年もどこか近くにツバメのねぐらがあるようで、たそがれ時にツバメの群れが鳴きながら飛びすぎて行きます。イワツバメも一緒に寝ているのかな。


ムカデとヤスデとネコ


 今年の大豊作は、ムカデとヤスデとネコ。見たところ20cm近いム力デがもう4回以上も室内で見られています。いきなりふろおけのふちに特大のが出現して、ぎゃあぎゃあさわいではだかで飛び出してしまったのに、わが家の男どもはまったく知らんぷり。そうこうしているうちにム力デは自分でお湯に落ちておぼれてしまいました。おそるおそる菜ばしでつまんで助け上げたものの、人工呼吸もできないし、触角を動かすだけの「植物ムカデ」の状態で何日か生きのびたようです。生きている時は20cmに見えるムカデが、死ぬと15cmそこそこに縮むのはどうしてでしょう。

 ヤスデの豊作は全国的らしく、ラジオか何かでも聞きました。こちらは食いつかないだけ気が楽です。 勝手口の外燈の横にすばらしく大きなオニグモの巣があって、毎晩きれいに張りかえるので、いながらにして昆虫の打火採集を見ているようです。でも、かかるのはほとんどユスリカばかり。

 最悪の豊作はネコで、黒白ぶちののらネコ一家4(?)頭がはばをきかせているばかりか、どうもどこかで出産したもよう。おまけに捨て描2ひきが売れ残り、ネコ好きな私にとっては、まさにまがまがしい状況です。わが家の黒猫ススム女史が今年はまだスズメも何もとってこないことだけが救いです。



水車ニュース オカヨシガモのヒナ確認


 今、丸浜川にはミジンコがどっさりいます。本当にどっさりいて、岸のそばがミジンコの大群でうす赤く見えることもあるほどです。7月7日、ミジンコを見ようとして観察舎餌場におりると、水面近くに1cmほどの小さなカダヤシ(メダカによく似た帰化魚)がいくつも泳いでいました。見とれていたら、ふいに2mと離れていない水面に大きなマスクラットが全身を見せて、こちらに向かって泳いできたのです。小さな黒い目には特に警戒の色はありませんでしたが、1mほどにちかづいたところで、何気ない様子で潜水し、それっきり姿を消しました。水面にはアメンボがいくつか浮き、鮮やかな青色を光らせてイトトンボが飛んでいました。このところ水位が割合低いためか、水がまっ黒になることもなく、なかなかよい感じです。

 新しい池のセイタカシギは、ヒナ8羽が無事に飛べるようになりました。結局8つがいが巣を作ったのに、ふ化にこぎつけたのは4つがい、それも4個の卵のうちそれぞれ2つがかえっただけでしたが、ヒナの事故がなかったのは何よりのことです。そろそろ広い世界へと親子が飛び立つことでしょう。

 セイタカシギのコロニー繁殖、シラスウナギのそ上、と2度も続いたビッグニュースのしめくくり(たぶん)は、何と本当にオカヨシガモのヒナでした。オカヨシガモは北海道では普通に繁殖しているカモですが、本州での繁殖例は昨年幕張埋立地で観察されたのが最初で、今回は2例目になります。つがいが残っていたばかりか、6月に北池で11羽ものオカヨシガモが見られたりしたので、ずっと注意していました。6月26日、池にフナの子などを放流に行った時にカモのヒナが見られたというので、何日かかよって探したところ、オカヨシガモの雌に連れられた中ビナ6羽を確認することができました。カルガモのヒナと違って眉線はほぼ1筋ですし、顔の色も少し暗い感じ。くちばしの先は黄色ではなく、へりが灰色っぽい色。また、カルガモのヒナの腰のあたりにある淡色の斑はもっと前に位置し、まっ白でした。


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