30 水車ニュース もしかして まさかねえ 1988年6月
二度あることは・・・・?
保護区の新しい池(名前はまだありません)は、丸浜川の水をじかに入れている上池と、くねくねした水路で上池につながる下池がならんでいます。下池は約20cmほど上池より低く、やや深め。上池は松や桜を掘り残してしまにしてあり、水はごく浅い状態(40cm前後の深みを別にすれば2~25cm程度)に保っています。
下池には水面に出る島がないので、2月にみんなで島づくりをしました。鳥の休み場になり、運がよければ巣作りにも利用されると思ったからです。スコップで重たい泥をえっさえっさと積み上げながら、「もしかして、セイタカシギが巣を作るかもしれないね。」「まず無理とは思うけど、そうなるといいねえ。」と話していました。「万が一、巣を作ってくれるとしたら、あぜ道みたいに細長くしておけば両端に1つずつ、2つがい作るかも知れないね。」そこでひょろ長い“かなへび島”ができました。
何と本当にセイタカシギが営巣開始!机くらいしかない“うらみ島”に1つ、“かなへび島”に2つ?!そして上池の中に3つ、連絡水路の近くに2つ。合計8巣36卵(1巣には4卵が決まりなのですが、1つの巣では雌どうしがペアを作り、8個が産んであるとのことです;北川珠樹先生のお話)。周囲の土手を含めてもわずか100m四方の場所に8つも巣があるのですから、日本初のセイタカシギのコロニーと言ってよいはず。話がうまくできすぎていて、信じられないくらいです。
下池の水は、太いホースを利用して、サイフォンの原理で外に流しています。古い水路を生かし、観察路の下はダクトを通してくぐらせ、乾燥が進んだセイタカアワダチソウの草原をうるおしながら、地表を伝ってじわじわとウラギク湿地にたどりつくというわけです。
これにはいくつもの利点があります。まず、必要に応じた水位の調節が可能になります。次に、池全体に水の動きをつけることができます。更に、ウラギク湿地周辺の乾燥した草原を湿原にもどすことや、干潟を汽水状態に近づけることも多少は期待できるでしょう。
サイフォンによる小さな流れができた時、「もしかして、シラスウナギ(ウナギの稚魚)が海から上ってくるかも知れないね。」「まさかねえ。」と話していました。ところが、いたのです。シラスウナギが。下池の水位を少し下げるため、観察路のダクトの位置を低くしようとして掘っていたところ、水たまりの中で何かがにょろっと動きました。ミミズやムカデにしては水面に出てきません。泥水をさぐってつかまえると、10cmそこそこのほんもののウナギ!うらぎく湿地(海水)からはたっぷり50mは離れているのに、新しくできたわずかな流れをたどってここまでやってきたのです。さっそく下池に運んで放してやりました。
「もしかして・・・・まさかねえ」が2回も続けて現実になりました。二度あることは三度あるといいますが、どうでしょうか。今、新池にはオカヨシガモのつがいがいますが、もしかして、巣でも・・・・でも、いくら何でも、まさかねえ
註:ライフリスト=その人が観察したことのある野鳥の種類のリスト。バードウォッチング用語の一つ。




