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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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29 鳥の国から あこがれの鳥だったのに  1988年6月

鳥の国から  すずがも通信50号掲載 1988年6月


あこがれの鳥なのに


 私はずっと前からヒレンジャクとヘラシギとミヤマホオジロが見たくてたまりませんでした。まだ私のライフリストに入っていませんし、どれも特徴がはっきりしているので、ああだこうだと悩んだり、図鑑をいくつも調べたりせずに、ひと目見ればぱっとわかるはずの鳥だからです。その鳥だけわざわざ見に行くのはいやなので、どこかへ出かけた時にふっと目の前に出てきてくれるか、観察舎から見える位置でじっくり見るというような出会いを期待していました。ついでながらどの種類もわが家から半径1km以内で記録されています。ミヤマホオジロなどは、100m先の苗圃に出現し、半日近くいてくれたのに、私が見たのは飛び去って行くしっぽだけでした。


入院患者はヒレンジャク


 野鳥病院にヒレンジャク君が入ったのは5月5日のことです。何でも、習志野で5月初めに20羽近くのヒレンジャクがやって来て、ヤツデの実をさかんに食べていたとのことで、そのうち1羽が猫に襲われて入院しました。あこがれていた通りのきれいな烏で、尾羽の先の紅色が何とも言えません。人がそばにいる間は動きをぴたっと止めて、まるで模型のようにじっとしています。植物を主食としているそうで、発見者の茂木さんが差し入れてくださったヤツデの黒い実をせっせと食べては、まっ黒なふんをするわするわ。目が赤に近い色なので、表情のきついこと。野外ではまだ見たことがない鳥が入院したのは、2月のハシジロアビに次いで、今年はもう2種類目。何となく初対面の感動が薄くなってしまいそうで、ちょっと残念な気持です。


ヘラシギがやってきた!が……


 残るはヘラシギ。どの本を見ても、くちばしの先にティースプーンをくっつけたようなかわいくてユーモラスな姿で、おまけに世界的に見ても数の少ない種類です。外国からみえた鳥にくわしい方がぜひ見たいと言われるのは必ずと言ってよいほどヘラシギとトモエガモなのですが、どちらもいつでもいるような種類ではありません。

 4月27日、待望のヘラシギが1羽見つかったとのこと。大喜びしたのはいいのですが、それからというもの、トウネンとヘラシギを見分けるのがひと騒ぎというか、ひともんちゃくというか、わけがわからなくなってしまいました。私はたかだか150mしか離れていないウラギク湿地にいるシギが、普通使っている25倍の望遠鏡ですっきり見分けられないわけがないと思うのですが、時にはヘラシギなのか、くちばしに泥をつけたトウネンなのか、40倍のレンズを使ってさえ意見がわかれることがあるのです。もう、ヘラシギなんか、きらいだ! 私のライフリストにはまだヘラシギを入れることはできそうもありません。


新しい池ではセイタカシギが繁殖


 セイタカシギのコロニー(コロニーと言える状態はたぶん日本初)のせいで、他の鳥がちょっとかすんでしまいそうですが、夕方になるとキョウジョシギやハマシギなどが結構入ってきて、春の渡りはまあまあでした。それにしても、小学4年の国語の教科書に登場しているオオソリハシシギは、今年もほとんど見られませんでした。

 トベラ、スイカズラ、ノイバラと初夏の花がせいぞろい。うっとりするようなよい香りです。センダンやシャリンバイもきれい。ヤマモモも実をつけました。



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