23 鳥の国から 1986年10月・12月
すずがも通信 40号 1986年10月
ふーっ、やーっと終わり!トヨタ財団の研究コンクールの提出期限が9月10日、その前、8月30日に報告会。一応ざっとしたまとめはおわっているものの、やっぱりちゃんとしたものを作っておきたいとよくばったばっかりに、まあともかくしんどかった!でも、何とか面白そうな結果が出てくれたし、発表会では他の団体の方たちがえらく面白がってくださったので、ほっとしました。それから約1週間、ぼーっとしてすごしています。
そんなこんなで、この夏は鳥さんの方はさっぱり。何か知らないけど、ヒナがあまり見られなかった。セイタカシギはちゃんと繁殖しましたが、バンのヒナがいない夏なんて初めてです。9月に入ってようやく若鳥が2羽、餌場の近くに出てきただけ。それに、ヨシゴイも、タマシギも、ヒクイナも、ぜんぜんだめ。朗報は、淡水池で久々にオオバンの巣が見つかったことぐらいかしら。
7月末、長かった梅雨が明けて、夏のひざしがかっと照りつけたとたんに、原因不明の病気がひろがり、セイタカシギが少なくとも6羽、カルガモも何羽か死にました。普通は夏の終わりによくあるのですが、7月に発生したのは初めてです。幸か不幸か、8月4日に台風10号の大雨。病気はその後出ませんでした。
セミがほとんど聞かれなかったのも、この夏の特異現象。長梅雨のせい?
繁殖の方がふるわなかったのに対して、渡りはきっちり、まあまあ、どうやら、というところ。そう、種類によりけりですが、谷津干潟の10分の1くらいかそれ以下の数は見られました。ご存知のことと思いますが、秋の渡りはたいてい7月中に始まります。初認日を挙げてみると、メダイチドリ(7月20日 9羽)、キョウジョシギ(7月29日 1羽)、アオアシシギ(7月17日 2羽)など。8月は渡りたけなわで、キアシシギは8月5日に214羽を数えました。アオアシシギ(8月30日 51羽)、ソリハシシギ(8月31日 57羽)、アオサギ(同日 89羽)等も割合多い記録です。
9月に入ると冬鳥が続々到着。コガモ(9月6日 18羽)、オナガガモ(9月11日 17羽)、ハシビロガモ(9月13日 5羽)、ヨシガモ(9月16日 1羽)、ヒドリガモ(9月18日 9羽)。9月10日に36羽見られたスズガモは、越夏組か到着組かよくわからず。
鳥さんたちが次々にふえてきたし、涼しくなってほっとしているのですが、海では今年も青潮発生。9月15日、18日は観察舎からも腐敗臭を感じました。秋の年中行事になってしまっては困るのです。本当に。あさりは大被害。養魚用水車の“せせらぎ1号”を持って行って回したい位。
18日、7日ぶりに顔を見せた青空のもと、アキアカネが飛んでいました。足止めされた渡り鳥たち、雨が上がったら一斉に旅立つかしら。
注目! 新装オープンの“ポニー行徳”(行徳駅前)、まっ白にぬりかえた外壁にツバメの巣がそのまま残されています。お店の方々の暖かい気持が伝わって、大感激。ちょっとまねのできないことではないでしょうか。ぜひご覧ください。
すずがも通信41号 1986年12月号
1日ごとにニセアカシアの葉が散って、見通しがよくなってきました。きびしいこがらしはまだあまり吹かず、暖かい小春びよりが続いていますが、鳥たちはすっかり冬のメンバーにかわりました。それでも、つい最近までヒヨドリの移動が見られ、11月20日には国府台病院で保護されたヨタカが入院しました。気候が暖かいために、秋の渡りが長びいているような気がします。
スズガモは、10月中にはやばやと3万羽をこえました。水面全体が黒々と大群で埋めつくされる見事さは、何度見ても見あきません。いつまでこうした光景が見られるだろうかという不安があるこのごろは、感動もひとしお強いのです。スズガモ君、いつまでも入ってきておくれ、と手を合わせたくなります。
今朝のこと、事務室のすぐ外でモズが鳴き出しました。アンテナに止まっているかと思って両隣の屋根を見ても、姿が見えません。ふと横を見ると、壁にはわせた網に雄のモズがとまって、いも虫をくわえたまま、ゆらゆらしながらキイキイと鳴いているところでした。どうも発音が不明瞭だった理由がわかりました。私たちにのぞかれて心配になったのか、モズはいも虫を呑み込んでしまい、飛び立ちました。
11月6日から、丸浜川の浚渫工事のクレーンショベルが動きはじめました。工事区間は延長320m、観察舎がまん中にあたります。クレーンのバケットがUFO島のニセアカシア林のかげになっている間は、スズガモの大群は割合落ちついていました。観察舎のまん前にさしかかると、さすがに姿を消しましたが、23日には5万羽前後がほぼ1日中見られました。これからあとは、クレーンが水面から次第に遠ざかるので、何とか冬中大群がはいってくれるのではないかと期待しています。ただし、曇った日には万をこす大群は見られていません。
カモメたちはあまり工事を気にしていないようで、放し飼いのウミネコなどは、ショベルですくったあとを、わざわざのぞきに行ったりします。見ているとあぶなっかしくてひやひやしました。観察室の窓のすぐ前で、ばかでかいバケットがさかんに往復して泥をしゃくい、クレーン越しにかもめの群れが護岸堤でつろいでいるというながめは、ちょっと想像しにくいものです。
浚渫工事が終わるまであと半月あまり。ご迷惑をおかけしますけれど、どうぞ
よろしく。
セイタカシギ29羽(10月~11月9日)。18日にはミサゴ1、チュウヒ3、ナヤブサ1が同時に出現。10月5日にはミヤマホオジロ1(初記録)。あまり変わったこともないようですが、夏枯れの時期にくらべるとやっぱりにぎやかです。




