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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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21 水車ニュース1 1986年6月 

「春の小川作戦」スタート。以後ほぼ毎号「水車ニュース」が掲載されています。

すずがも通信38号 1986年6月号


水車が動きはじめました!


 私、もしかしたらハナオンチかハナメクラになってしまったかも。何のこっちゃ、とお思いでしょう。におわないのです。水路が。

 全然臭気がわからなくなったわけではありません。特に塩浜橋から下流はたいていくさいのです。それに、水車のあげる水しぶきの風下側に立つと、どぶくさい臭いがします。でもここ半月以上、くさいか、くさくないか、ということばかり気にしながら川ばたを歩いているので、いい加減鼻がばかになってしまったのではないかとも思うのです。何しろ私としては、水車の効果が上がったと信じたくてたまらないのですからーーもっとずっとシビアで批判的な人で、においをかいで比較してくださる方がおられるといいのですが。

 5月3日にようやく水車が始動してから20日、幸いに故障も事故もなく、 しっかり回っています。特に臭気についてはめざましい効果があるような気がします。5月12日、流れてしまった桟橋を回収しにボートで塩浜橋まで川下りをしましたが、水車の手前5mくらいから水が真っ黒になり、臭気がきつくなったことに驚きました。10日にも同じような状態が見られています。水車のためとばかりは言い切れませんが、ショッキングな事実です。

 ところで、丸浜川バードリバーの上流は福栄公園、下流は浦安寄りの猫実水門です。その限りでは下流が水車の影響を受け、多少とも状態がよくなると考えるべきです。ところが、さにあらず。水位が低い時は上下関係はその通りで、観察舎から海方向を見て左から右へ水が流れています。でも塩浜橋下にある排水路からの下水流入量の方が、上流からの流入より圧倒的に多いので、水位が高くなると、下から上への逆流が起こる上、下流から入ってくる水の方が黒くなっていることが多いのです。ですから水車の効果は、むしろ本来の上流の方で現れると考えるべきでしょう。

 色やにおいを記録するのに、何とかもっと的確な方法がないかと悩んでいま す。もう1つ、色の変化やにおいの発生の条件についても、しぼるべきポイントがありそうです。水面や泥の上を吹きわたった風が、ちょうど顔にあたる位置でにおいをかぐというのは、どうも風向きだけではなく、空気の上下動の影響があるようです。においを最もよく感じるのは、湿度が高く、微風の向い風(東寄りがよい)の場合で、かぜをひいたりにおいに慣れたりしていない時もあって、なかなか同じ条件にはならないものです。それに、「油くさい」「どぶくさい」「硫化水素臭」 など、いろいろなにおいの質になると、もうお手上げ。

 色は雨のあとのやや澄んだ状態から、緑褐色のにごり、うす黒いにごり、みどり黒いにごりを経て、黒、真っ黒、墨黒となります。墨黒は今回初めて見る状態で、これも酸素供給の影響かもしれないのですが、この色が藍藻などのプランクトンのためか、硫化第二鉄のようなもののためかもわかりません。

 さて、それにしても、私としては、水車が水の浄化にどうも効果がありそうだと考えて、有頂天になっているところなのです。この夏のうちに、ミジンコや糸ミミズがわっとばかりにふえて、岸近くがうす赤く見えるようになりはしないかと期待して、ワルノリのしすぎかなと反省しています。もしかすると、この会報が出るころにはめちゃめちゃに逆の効果が出て、頭をかかえることになるかもしれ ませんが、ともかく今はルンルン気分です。だって、川ばたのノイバラやスイカズラ、台湾桐の花の香り、それにアシの若葉の香りだってわかるのですもの。



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