19 鳥の国から 1986年2月
1986年から「鳥の国から」というタイトルで、すずがも通信への連載が始まりました。
鳥の国から 1986年2月(36号)
元旦のお昼前、「初日の出の会」のあと片づけをしながらふと外を見ると、まあ、白くて大きな鳥がちょうど水面におりたところではありませんか。コハクチョウ、何と6羽も!12月13日の3羽(成鳥2、幼鳥1の親子連れ)に次いで、今冬2回目の飛来です。全身純白の成鳥3羽、灰色がかった幼鳥3羽。落ちつきなく首をまっすぐ立てたまま、鈴ヶ浦をぐるりと一周泳ぎ、いくらかくつろいだ様子でもう一周、それから羽づくろいをしながらUFO島のかげに隠れ、ふと目を離した1~2分の間に消えてしまいました。この間約1時間。飛び去ったのは確かだと思うのですが、誰も飛んだところを見ていないのです。テレポーテーションしちゃったのかしら。でも、今年はきっといいことがあると思うことにしました。
☆スズガモ 11月28日から消えてしまったきり、まだ帰りません。間が悪かったというのでしょうか。塩浜の湾岸道路側で大きなホテルが建ったり、高い杭打ち機が動いたりしているためか、スズガモの群れが保護区海面の行徳高校側にはりつくように入っていたのです。そこへ、水路浚渫工事のクレーンショベル。高いところでゆらゆら動くものって、カモの大群は本当に嫌うんですよね。 クレーンが保護区の海面から見える水路の曲り目のあたりまで入ってきたのが11月26~27日、そして28日からの群れの消失。どうしても関連づけて考えないわけには行きません。その後、何度か1万羽前後の群れが入ったのですが、工事の砂を運ぶダンプカーのドスンドスンという音で舞い上がったりして一向に落ちつかず、やけっぱちで元旦をむかえました。
ところが、元旦は3~4万羽が朝7時すぎに入ってきたのです。それはそれはみごとな眺めで、初日の出が雲に隠れた恨みも帳消しになりました。
ところが、ところが……この大群が入ってきた直接の原因は、何とハンターさん。塩浜海岸の岸からほんの2~300mまで舟を乗り入れてきて、銃猟禁止区域内でカモを撃ち、拾って持って行っちゃったのだそうです。元旦早々、何てことでしょう。
“あぶく銭身につかず”のたとえのように、1月2日以降、スズガモは戻りませんでした。水路の浚渫・砂入れ工事は思いのほか難航し、12月中に終わる予定だったのが、どうも2月にかかってしまいそうです。特に浦安や塩浜方面の方にはご迷惑をおかけしています。クレーンがだいぶ下流に移ったためか、15日以来5千~1万羽のスズガモが続けて入っているので、もしかするとある程度の数 が戻ってくれるかも知れません。「カモ、どうしたんですか?全然いませんねえ」……おわびするのも心苦しいのですが……とにかく、すみません。
熟した木の実を求めて、ツグミ、ヒヨドリ、オナガなどが群れをつくって「出勤」するようになりました。1月18日の夕方、観察舎の前を通って次から次へと新浜鴨場に帰って行くツグミ、70羽以上。電線のま下などにふんがいっぱい落ちているのを見ると、どこかのお宅で目のかたきにされていないかと心配になります。
餌場のバンも、今のところ休戦協定中で、10羽~14羽もがけんかもせずにパンをつついています。寒中の飢餓に対するやむを得ない適応でしょう。
オオハシシギ越冬中。セイタカシギの若鳥が時々餌をとりにきます。雨などで水面に集まるカモが少なく、観察舎に来られるお客様も少ない時によく現れるような気がします。
ハクセキレイが2羽、観察舎2階南すみの窓ガラスと三次主幹の車のバックミラーを相手になわばり争いを続けています。自分の姿が映るので、侵入者と思うのでしょう。足跡やふんだらけ。見ていても面白いのですが、室内に人がいるときは、さすがにやりません。
オオタカは今冬はめったに現われず、ノスリがずっといて、2羽の記録もあります。1月6日の日中、通りかかった私に驚いたらしく、水路のやぶからトラフズクと思われるものが飛びたつのを見ました。ホオジロ類が割合多く、これまで目につかなかったカシラダカも保護区本土でよく見かけます。前の年に多かったエナガは見られず、シジュウカラはいるにはいても、一応は、という程度。白鳥が2回も現れたので、北国は寒いんだろうなと思います。




