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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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17 前段 その8 1985年8月・10月

17 前段 その8


「すずがも通信」33号(1985年8月)


【スズガモ軍団通行止め?】

 鳥の保護区などというものは、まあ次から次へといろいろなことがあるもので・・・・

 6月16日(日)のこと、観察舎正面(塩浜)の三菱電機倉庫のまうしろに、にょっきりと鉄塔が出現しました。下半分が組み立てられているのは土曜日に見えていたのですが、16日の朝には半分だったのが見る見るうちに高くなり、夕方には60m近くの高さで組立完了。翌月曜、今度は300mほど千葉寄りの京葉線塩浜駅予定地の近くに次の鉄塔が立ち上がりはじめ、さあたいへん。完成のあかつきには、保護区のどまん前、スズガモ軍団が朝晩飛ぶルートを完全にふさぐ形で電線が張られてしまうというわけです。工事現場にとんで行って話をうかがったところ、7月10日には電線を張り終えるとのこと。京葉線の複々線予定地に、浦安市美浜から市川市の千鳥町まで約2km、高さ50~58mの6基の鉄塔がたてられ、6万ボルトの送電線ができる予定だそうです。

“ぎゃあーっ”(と絶叫!)

 とるものもとりあえず、東京電力(習志野営業所)と千葉県自然保護課に連絡し、何とか対策をこうじていただきたいとお願いしました。幸い東電は積極的に対処してくださり、我孫子の山階鳥類研究所などにも出向いて協議された結果、送電線の1本1本に約1m間隔で輪をはめ、空中にぽちぽちが出るようにして電線を目立たせるほか、5mに1個の割合で蛍光色の黄色い輪をつけ、よじれどめの金具もその色に塗る また鉄塔にも反射板をつける等の策をとられることになりました。かなりの経費をかけて、鳥のために電線が見えやすくしてくださるわけで、ありがたいことですが・・・・さて、今冬のスズガモはどうなることでしょう。何とか例年のような大群が入ってきてほしいし、何百、何千羽という犠牲(電線衝突事故)が出るのは避けたいしー目印対策が功を奏することをただひたすら祈っています。

 7月7日現在、電線の仮張(?)修了。きちんと張り終えてから、目印用の輪を1つ1つ人力ではめるとのことでした。



「すずがも通信」34号(1985年10月)


【秋の訪れ】

 秋の渡り、まさにたけなわ。昨夜来所したキビタキ若鳥を朝放鳥したところに、車にぶつかって目をまわしたメボソムシクイが入院(元気がよく、即放鳥)。鴨場の中ではサンコウチョウが見られ、ハイイロチュウヒも初認。9月15日、敬老の日のことです。

 カモもふえてきましたよ。コガモの初認は8月21日・1羽、オナガガモは9月4日・2羽、ヒドリガモは9月7日(?)・1羽、シマアジは9月8日・1羽、ヨシガモは9月5日・2羽、ハシビロガモは8月20日・1羽。マガモは7月頃から1羽が見られているので、渡来したものなのかどうかよくわかりません。まだ大きな群れは見られませんが、小編隊が空を横切る姿はいかにも秋らしい風情です。


【ロクちゃん死亡】

 悲報いくつか。9月7日、セイタカシギの若鳥が立てなくなって保護されましたが、2日ほどで死亡。

9月15日、フクロウの「ロクちゃん」の死体を鴨場内で発見。前年6月に松戸から持ち込まれた2羽のきょうだいで、1ヶ月ちょっとで放した後、2階研究室窓から餌をもらいに入ってくるようになりました。1羽は1週間後から戻らなくなりましたが、ロクちゃんは毎晩のように餌をもらいに帰ってきました。時には同じ室内の小鳥のかごに体当たりして落とし、獲物として食べてしまったことも。巣立って以来13ヶ月、完全自立から3ヶ月。よく太っていたのですが、死因は心臓・肝臓破裂。衝突によるものらしく、心房内に大出血がありました。電線衝突か、交通事故か。胃には意外にもコオロギが。もっと大きな獲物をねらっていると思ったのに。それでも、親の指導がなくても猛禽類の野外復帰ができたという例でした。


 アオサギいーーっぱい。8月2日・10羽、8月6日・15羽、8月22日・31羽、8月25日・52羽。繁殖しないのがふしぎ。不忍池のカワウが島1つ分だけ追い立てを食ったとのことで、100羽だったカワウが200羽をこえたのはそのせいかしら。


【響くアオアシシギの声】

 夕方の潮がさしてくると、ウラギク湿地からシギが次々にとび立ちます。ひときわ美しくひびくのはアオアシシギの声、チョーチョーチョーと哀調を帯びた澄みきった音色です。夕風がたってオシロイバナがひらき、あとからあとから散歩の犬が通るラッシュアワー。

 涼しくなったとたんに、虫の声と紅葉に気づきました。4年前に小櫃川河口から導入したマツムシもちゃんと鳴いています。


註:ウラギク湿地=保護区内の海水域にある湿地。観察舎からは左前方に広がっている。




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