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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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15 前段 その6 1985年2月 4月 

15 前段 その6


「すずがも通信」30号 1985年2月


【スズガモの帰還に思わず合掌!?】

 あけましておめでとうございます。元旦恒例の初日の出の会も、雲一つない上天気で実にみごとな眺めでした。スズガモ君たち、今冬はどうやら落ちついてくれるようでほっとしています。今からでも(たぶん)遅くありません。がんばって朝の6時に塩浜岸壁までお出かけください。スズガモの朝帰りの光景には、思わず合掌したくなるような荘厳さ(オーバーかしら)があります。


 さて、観察台が寒いので(事務室は暖房がきいているので――怠慢!)、望遠鏡にむかう時間がとみに少ないこのごろ。スズガモは1月12日からやや少なくなって3~4万羽というところですが、相変わらずみごと。1月12日、新浜鴨場内のカモが全部出ていってしまうという大椿事があって、場長さんが困りきっておられました。

 オオハシシギ健在(1羽)。アオサギが20~40羽くらい越冬。ふつうは鴨場内心字池の中の島のマツの大木で日中ねぐらをとっています。

 厳冬期は休戦中らしく、けんか好きのバンが小グループで餌をとっています。餌場で11羽までかぞえました。キジも雄同士・雌同士で連れ立っているようです。


【コミミズクの救出】

 1月5日、コミミズク救出作戦をやりました。高さ15mの空の倉庫の天井近くをひらひら飛びまわるコミミズクを追って、網をはった竹ざおを高さ12mのクレーン上でふり回すオソロシさ。高所恐怖症になりそう! それでも無事保護し、3日後、150g近くふとらせてから放鳥。角、原、吉田君ご苦労様でした。


 枯草色の景色の中で水仙やヒガンバナの葉だけ、つやつやと緑色。オオイヌノフグリが咲き出すのも間もなくでしょう。

 観察舎前を通る水路の浚渫工事(行徳高校付近)がはじまります。御迷惑をおかけしますが、どうぞ事故などのないよう、よろしくお願いいたします。


註:観察舎前の水路。雑排水の流路、というよりは、細長いため池です。ここの水があまりにも汚いことが問題になりました。臭気対策等のため浚渫工事を行うとの連絡が千葉県の企業庁から1984年7月にありました。水鳥の生息に影響が少ないようにしてほしいと行徳野鳥観察舎友の会等が要望し、結局中央部の約10mについて泥を50cm除去するという形になりました。数年前からこの水路は水が真っ黒で臭い日が続き、何とかならないかというのは住民も観察舎利用者も共通の願い。しかし、これまであちこちで見たかぎりでは、底の泥を浚渫しても状態がよくならないのが通例。

 どぶ川に親しみを持ってもらうために、水路の愛称を募集。「バードリバー」が最多票で、かつての丸浜養魚場から「丸浜」を冠し、丸浜バードリバーと呼ぶことになりました。



「すずがも通信」31号(1985年4月)


【オオワシ!】

 3月4日の朝、ふと外を見ると・・・・200mほど離れた岸辺に、黒い犬みたいなのが、でんとすわっています。ちょうどシェパードぐらいの大きさ。「たぶん野犬だよね。まさかワシじゃないよね」などと言いながら望遠鏡をのぞくと、な、なんと! 本当にワシだったのだ! 目をいくらこすっても、眉につばをつけても、どう見てもオオワシの若鳥。

 首をのばしたアオサギぐらいの背たけで、横はばもたっぷり。大あわてで証拠写真を撮り、ざっとスケッチし、じゃんじゃん電話し、その間あわれな禽舎の鳥どもは餌も与えられず、ほったらかしのまま・・・・。

 10時20分、飛びたった姿の大きかったこと。はるかかなた、江戸川対岸にある清掃工場の赤白煙突の左手におりた、と見とどけて間もなく、息せききって到着した桑名さゆみ女史。寒さにもめげず(さすが若さ)自転車で妙典に出かけ、見つからずにあきらめて帰る直前、12時10分に清掃工場左手から飛びたったオオワシを発見、「ばっちり見ちゃった!!」そうです。

 観察舎では旧館時代に小見川で射たれたオオワシ若鳥が入院したことがありますが、野生でははじめて。日曜だったらもっと大勢の人に見せてあげられたのにと、都合のよいためいき。


【春はかけ足で】

 2月18日以来、庭の焼却炉あたりにずっと、モズの雄がいます。いつ見てもいかにもひまそうで、そばを通るたびに目があってしまうのだ! 3月6日頃から何となく用ありげに姿を消したり、動きまわったりしているけれど、ヒナがかえったのかな。それにしてもこの2ヶ月くらい、雌の姿を見かけないのが気になるなあ。

 同じく2月18日から庭でフクロウが鳴くようになりました。昨年から放し飼いで野生復帰をめざしている「ロクちゃん」と、翼が折れて禽舎住まいの「ジュクちゃん」です。オーオー ボロキテホーコーという、おなじみの声の他に、ホホホホまたはワワワワと聞こえる声で鳴きます。遠く近くひびいてくるフクロウの声、最高!

 2月に入ってから雨もようのはっきりしないお天気続き。雨のたびに姿を消していたスズガモは、日曜・祝日になると入ってきていましたが、3月10日には5000羽そこそこ。そろそろお別れのようです。

 3月4日、ゴイサギ90羽。同9日、コサギ17羽。分散していたサギたちが帰ってきたようです。10日にはバンが交尾。この会報が出る頃には、桜が咲いているかな。



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