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カラクリワールド  作者: 加藤イセ
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初めてと夕日

 

 目が覚めてから2日目、僕はエタフィと散歩をしていた

 僕が工場跡地だと思っていたものは人間を生み出すための研究所だったらしい

 老朽化によって劣化してしまったそうだ。

 跡地の周りをエタフィと話しながらゆっくりと歩いている

 まだ走れるほどの体力は付いていないからだ。



「エタフィ、君はいつからここに居るの?」


「はい。エタフィが作られたのは凡そ200年前です。ナムフ様とここに住まい始めたのは14年前ですね!」


 に、200年かあ

 僕が今まで生きてきた年月の10倍以上…

 ロボットだからおじいちゃんにならないし、嫌な事も忘れないままなんだろうな。しかも、ずっと孤独で。


「どうかしましたか?エタフィはナムフ様が暗い顔をすると心配になります」


 そうプログラムされているから?

 などと不気味な質問をしそうになったが

 よく考えたら人間の感情すらもプログラムの結果にしか過ぎないのかもしれない


「ありがとうエタフィ。大丈夫だよ」




 ふと気付くと、跡地から少し離れた場所まで歩いてきていた。

 エタフィと同じ大きさ(1.2メートルくらい?)の岩がそこらに転がっている。

 そしてその隙間から青や赤の花が顔を覗かせていた。


「きれいだね。」


「そうですね。エタフィもここに来たのは初めてです。」


 他愛もない会話だ

 しかし心地いい


「ひとつ、摘んでいきますか?」


 たしかに、これを休憩室の机にでも飾ればさぞ心安らぐだろう


「いや、いいんだ。これはここにあるからいいんだ。たぶんそうだろう」


 なんとなく分かったように呟いてから、そこを後にした。

 エタフィもしたり顔で耳をぴょこぴょこと動かした


「明日はもう少し先まで行ってみますか?」


「そうだね、もっと良いものがあるかもしれないね。今日は色んな初体験ができて楽しいよ」


 初めての散歩、雑談、感動


 色んな事を味わった。


「そろそろ帰ろう。お腹も空いたし、すこし疲れた。」


「そうですね。無理は禁物です。今日はエタフィが腕を奮って『シチュー』を作ります!」





 ――――――――――――――――――――



 帰ってきて、エタフィが作ってくれたシチューはとても美味しかった。

 どうやら昨日食べたレイションをお湯にとかして味付けしたものらしい。


「ちょっと外の景色見てくるね」


 そう言って僕はハシゴを登った。

 空に赤光が見える。どうやら夕方らしい。


 ハシゴの最上部に手をかけると、差し込んだ夕日が爪の隙間から染み出している。



 僕はしばらく夕日を見つめて、それから眠った。




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