指針
「どうぞ」
コト、とエタフィは華の模様が描かれたカップを僕の前に置いた
「ありがとう」
1口すすると、ほのかに甘い香りが口に広がる
「りんごの紅茶です。詳しくは分かりませんが、遠い昔に作られたものを再現してみました」
さて、とエタフィ
「何からお話しましょうか?」
そうだな、僕が今1番知りたいこと、それはなんだろう
出生について?僕は何者?
「僕の…ナムフって名前は何か由来が?」
「すみません。エタフィにはその事柄についての知識がありません。しかし、あなたの名付け親は人間です。人は子に名を与える時必ず意味を持たせるらしいので、ナムフ様にもきっと素敵な意味があると思います」
そっか、なんでも知ってる訳では無いんだな。
「僕はどうやって育ったの?」
僕が目を覚ましたのは今日だ。それ以前の記憶は無い
エタフィが面倒を見てくれていたらしいが、寝たきりだったのだろうか?それにしては筋肉が衰えたりしていないが。
「ナムフ様はエタフィが管理する育成ポッドにより育成されていました。この世界の環境に適応した唯一の人間です。毎日エタフィが電気信号と栄養液により健康状態を管理していました。日に数十分ほど外で日光浴をしていましたが、運動等は出来ていないため基礎体力はかなり低いかと思われます。」
暖気マッサージみたいなもの?かな
体力が無いのはさっきの猛烈な眠気で分かっていた。
これは運動しないとな…
「そっか、ありがとう」
はい。とエタフィ
「まだまだ聞きたいことはあるけれど、脳がパンクしそうだから辞めておくよ。掘り下げたらキリがない話題っぽいし、ね」
それに、どうやら僕はお堅い話が得意ではないようだ
この性格もエタフィの電気信号から得たものだろうか?
「そうですか。また何時でも聞いてください。エタフィにはお答えする義務があります。」
「うん。よろしくエタフィ」
さて、これからどうしようか。
しばらくはここで過ごすのも悪くないけど、さっきの崖から見えた景色の中に、少し大きめの街があった。
あそこには他の生物?ロボット?が住んで居たりするんだろうか
「エタフィ、他に人間ってどこかに居るの?」
少しの沈黙。
「いえ、恐らくは居ません。古い時代の大戦により、この星の空気は人に不適応な物へと変化してしまいました。よって、もし人間がいるとするならば…」
僕を指さすエタフィ
ちなみにエタフィの指はモコモコ三本指だ
「僕、いや僕のように作られた人間?その、環境に適応した?」
そうです。とエタフィ
なるほどなあ。じゃあ僕以外の人間に合うのはかなり難しそうだ。
おっと、さっき質問を辞めようとした所なのにまた聞いてしまっている
僕って意外と好奇心豊富なんだな。
「しばらくここに居てもいい?」
街に向かうにも、ここで生きていくにも、体力をつける必要があった
なのでしばらくエタフィのお世話になれればと思う
「はい!エタフィはその為に作られました!精一杯のお世話をさせていただきます!」
決まった。
とりあえずは、ウォーキングからかぁ!