機械人形
「君は…」
少し困惑しながら訪ねた
彼、(彼女?)にはまったく気配がなく
僕にはハシゴを降りた事さえ気づけなかった
「失礼しました。私はエタフィと申します。ナムフ様がお目覚めになられるまでのお世話をしておりました。」
どこか無機質な声でそう言った
見た目は丸くて青色をしていて、頭からはふさふさした耳が生えている。
僕は立ち上がって話しかけた
「えっと、エタフィ、よろしく。僕はナムフというの?」
驚いて詰まってしまったけど、僕から話しかけて無視するのも嫌だったので返答した
「はい。あなたはナムフ。ヒトとして作られた初めての存在です。個体名は『ナムフ369』我々とは異なる整体電気を持った。生命体です。」
な、なるほど?
よく分からない単語が沢山出てきて焦ったが、とりあえず僕の名前はナムフというらしい。
「君はここでの僕の世話を?僕はずっと寝ていたの?」
『ウィ』という機械音と共にエタフィは頷いた
「ナムフ様は本日で14年と181日間生きておられます。その間電気信号にて年齢に即した情報をお伝えしていました。お食事は栄養液を注射しておりました。」
「なるほどありがとう」
難しい事を言っているがとりあえず流した
それにしてもお腹がすいた
さっきから虫がぐぅぐぅと鳴き出している
「エタフィ、何か食べ物はある?出来れば固形がいいな…」
栄養液?というので想像してしまった流動食は避けたい。
見たことないはずなのに嫌悪感があるということは、あまり美味しく無いのを体が覚えているのだろう
「分かりました。少しフルイですが、備蓄食があります。何分生命体は少ないもので、こちらも少ないのですが。どうぞ。」
ガチャりと自らの丸いお腹を開け、パサパサした長方形の物体を僕に差し出した
「フルイ言葉で、『レイション』と言うらしいです。味はエタフィには分かりかねますが、機械人形なもので!」
何だかロボットアピールがあった気がするが、スルーして受け取った
「あむ」
1口、口に含む…
うむ、なるほど
おいしい…気がする…?
余りにも食品を口にする経験が少ないからか、味覚の判断が主観的になってしまうけど、これは多分、「美味しい。」
甘くて、サクサクしていてお腹に溜まる
「あむ」
勢いよく2本ほど一気に食べて、お腹がいっぱいになった。
「ごちそうさま、エタフィ」
イエイエ、と首を振り、かしこまるエタフィを横目にすこし笑いながら座り込むと、壮絶な眠気に襲われた
「おや、目覚めたばかりで動いたりものを食べたりでエネルギーが足りなくなりましたか。今しばらくおやすみをーーー」
という声も遠くなり、深い深い眠りに落ちて――――――――――――――――――――