終わった世界
古い工場跡地で僕は目覚めた。
「ここは…?」
見覚えのない景色に困惑しながらそう呟き、ポケットに入っていた飴玉を口に入れた
覚えている最後の記憶は、、
「何も覚えてないや。僕は誰なんだ。」
名前もわからない。ここはどこなんだろう。
年代は?国は?
「よいしょっ」
しばらくそこで待っていたが、誰もくる気配が無いので
立ち上がり、工場跡地から出た
そこは高台になっており、目下には崖があった
ひゅーひゅーと風が通る音が響いて、僕を誘っている
「うひゃあ、僕って高所恐怖症なのか」
自分の性格を知りつつ、工場跡地の裏手に回った
すこし開けた場所に、井戸のようなトンネルがあった
そこにはハシゴが掛けられており、地下へと行けるようだ
「ここ高いし、地下っていうか、一階?」
ハシゴをゆっくりと伝って、下まで降りた
「これは…」
遺跡?のような場所があった。
400メートル四方ほどの岩壁の部屋
その壁一面に様々な模様が描かれている
釣りをする人 車に乗る人 笑う人 泣く人 …
殺し合う人達。
「これ、なんだろう、よく分からないけど、悲しいな」
少し涙が出そうになった。あまりの迫力に気圧されたのだろうか。やっぱり分からなかった。
僕は部屋の中をぐるぐると周り、座り込んだ
「あー、あー、」
部屋に声が反響する。低くも高くもない声だ
この部屋には電気が通っているらしく、天井からの光が床に反射している
とりあえず水たまりを覗き込み、自分の容姿を確認した
肩ほどまでの黒い髪
年齢は14歳ほどだろうか?
「うーん」
いろんな事は覚えているのに
自分が誰か、何故ここに居るのかはさっぱり分からない
しばらくそうやって唸っていると
「やっと、目覚めたのですね」
ハシゴの方から声がした。
そこにはー