表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
留学先は異界でした  作者: 成谷(ナルヤ)
6/6

第6話 オアシス2

前回の続きです。1話にしようとしたら微妙な長さになってしまったので2話に分けました。



私は、このとき生まれて初めて特殊スキルを使った。


…いや、使()()()とした。


何でこんな言い方をするかと言えば、使えなかったからだ。


受けたものの体を任意の時間まで巻き戻すことが出来る魔法、『時間遡行の風(リタイム・ウィンド)』。


おじいちゃんも知らなかったその魔法の効果は絶大で、代償がどんなものか想像もつかないので使用は禁止されていた。


「何でよ…何で使えないのよ…!」


私の魔法は攻撃に特化していた。だから助けられる魔法はこれくらいしか無い。


私は彼に泣きついた。


「お願い。死なないで…」





何時間経っただろう。私は気が付いたら眠ってしまっていた。


私は慌てて彼の容態を確認した。


「ほっ…」


彼は生きていた。魔力量も変わらず、呼吸の細さも変わっていなかったが。まるで、誰かがわざとそうさせたかのように普通ではありえない状態で、生きていた。


私はこの日から彼の世話をするようになった。







朝、彼のベッドの横で起きると、森の見回りに出掛ける。


「クラッシュ、おはよう」


「おう。おはようさん」


驚くべき事に、この森にはトレントと呼ばれる魔物も住んでいた。トレントは、魔力の濃い場所で多くの魔力を吸う事で自我が芽生えた木である。そのトレントが、この荒野の中に何本もいるのである。


「何か変な出来事はあった?」


「いんや。平和そのものだな」


彼らは自らの住処を守るため、外の監視を買って出た。クラッシュはトレントの中でも気さくで、話しやすい木だ。


「そう。ならよかったわ。引き続きお願い」


「言われなくてもやるさ…それで、俺達を作った人間はまだ目を覚まさないのか?」


「…」


「あーあ、何やってんだか。ディアはこんなにも想っているってのによ」


「おっ、想ってるってなによ!ただ、恩を返すってだけよ!もう!急に何てこと言うのよ…」


私は顔が赤くなるのを感じた。それが何を意味しているのか、私は分からなかった。クラッシュが知った様な口調なのが何かとても悔しかった。


「そうかい、じゃあそう言う事にしといてやるよ。…そろそろ見張りに戻るとするか。じゃあな。」


そう言ってクラッシュは去っていった。





そうして朝の見回りを終えると、部屋に戻り、彼の世話を再開する。


…と言っても、私が彼に出来ることは殆ど無い。せいぜい、額の上にちょっと冷える葉っぱを置いたり、自分の魔力を少し分けてあげたりするくらいだ。魔力は分けてあげたとしても精霊のように外の魔力を吸収する事が人間には出来ないため、本当に気休めでしか無い。


「いつになったら起きるのよ」


私は穏やかな顔で眠っている彼の頰をつついた。


「起きたらただじゃおかないんだから」


そして彼の胸板に飛びついた。


小さな鼓動を感じる。ここまで近づかないと分からないほど微かな彼の魔力は、あの時と変わらず綺麗で暖かかった。








次回から八雲視点に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ