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留学先は異界でした  作者: 成谷(ナルヤ)
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第4話 状況確認





目が醒める。

月明かりが眩しい。

窓の外の月に手をかざす。


そこには見慣れた自分の手があった。どうやら体があるみたいだ。武士の話も信憑性を帯びてきた。


「あいつ次あったら何かしてやろ。」


言動が変な奴だった。あいつの思い通りに動くのはなんだか癪だが、正直生き返りたい、というか死にたくない。その為にはここで生き残らなければいけない。


「ここはどこだ?」


体を起こしてベッドから出た。今俺のいる部屋には二段ベッドが二つあり、俺はその一つの下の段に寝ていたらしい。残りのベッドには三人が寝ていた。


ここは宿屋か何かだろう。


ガチャ


部屋のドアを開けると廊下が続いていて、同じようなドアが2つあった。


廊下を歩いていくと、明るい広間に出て来た。そこには喫茶店にありそうな丸いテーブルが並んでいて広間の中央にはバーのカウンターのようなものがあった。


ランプが点いているため明るいが、そのランプが四角いキューブの形をしていて気になった。


「何かありましたか?」


「へっ?」


急に後ろから声を掛けられた。背筋がゾワってなった。


「あぁすいません。こんな夜遅くに部屋を出てくるものですから何かあったのかと。」


そう言って彼女はカウンターに入り、書類を見た。茶髪の髪を短く揃え、それに合う端正な顔だちは惹きつけられるものがあった。


「…ええとあなたは昨日からこの宿にお泊りになられたヤクモ様ですね。何か困ったことがありましたら何なりとお申し付けください。」


そう言ってニコッと笑った彼女はとても美しかった。今まで色々な事が起こり過ぎて、心が落ち着かなかったが、彼女の笑顔はそんな俺の心を癒してくれた。



「はっ!」


少し見惚れてしまっていた。


「大丈夫ですか?」


慌てて思考を巡らせる。


「あー、大丈夫です。少し外の風に当たって来ます。」


とりあえず外に出ることにした。


「夜の外は危険ですから気をつけてくださいね。」


「はい。わかりました。では」


「いってらっしゃい」


ガランガランと風鈴の様なものの音をききながら、正面の大きな扉を開けて、外にでる。




街を見渡しながら夜の街を歩く。電灯のようなあかりは殆ど無いが、月明かりで周りを見る事が出来た。


かなり大きな街みたいだ。


はっきりとは分からないが、城の様なものも見える。いかにも中世ヨーロッパって感じだ。実物を見たことはないけど。


人通りは少なく、声を掛けられることもなかった。




少し歩いたところに、整備された川があった。俺はその近くのベンチに座って、今の状況を整理する事にした。




まず、海外留学に行く途中、飛行機は墜落した。


もうだめだと思ったら、月の表面みたいな荒野に飛ばされてた。


そこで魔法を使い過ぎて、倒れて死んだ。


そうしたら変な武士に会って、生存バトルロイヤルとか言うものに参加させられた。


で、起きたらこの街って感じか……




とりあえず今は生き残る事を考えれば良いんだな。でも生き残るって詳しく言うとどう言う事なんだろ。何かに襲われるからとか生活が厳しいからとかそう言ったことは何も言ってなかった。


いったい何に備えればいいんだろうか。


「考えたって無駄か。」


出来ることから考えよう。この世界で生きるために重要なものは一つは分かっている。


魔法だ。


この世界では魔法があれば水や食料を調達出来るし、防衛手段にもなるだろう。魔法が使えなければこの世界では生きていけない、そんな確信すらある。


しかし使い方には気を付けなければいけない。僕は自分の魔法で死んでしまった。


「いやまてよ…」


魂だけだった時、武士は特殊スキルを使う場合は代償を必要とする。普通のスキルは疲れるだけだと言っていた。


つまり特殊スキルを切り札に、普通のスキルは主戦力として使えるということか。


「…やってみるか」


あの透明なプレートは何処だ?


あ、ポケットに入ってた。


…服変わってね?


飛行機ではパーカーを着ていたはずだが、気付けば薄い皮みたいな服を着ていた。武士が用意してくれたのかな。


まあいいや。取り出したプレートを見る。


=======================================


徳山 八雲


レベル:17


生命力:100(仮)

瞬発力:300

持久力:100

魔力:2600


スキル:〈大地魔法〉

ウォーター、ファイア、ロック、ヒール、種生成、操樹


特殊スキル:〈大地魔法〉

生命の息吹


称号:〈異世界転移者〉


取得可能スキル:なし


=======================================



あの時の俺は間違っていた。特殊スキルは魔法種による固有の魔法という意味ではないらしい。


そうなると案内人が言っていたのは『種生成』という魔法か。


とりあえずりんごの木をイメージしてやってみよう。暴走しないように恐る恐る…


「…種生成」


ポン!


掌の上にくるみくらいの大きさの種が出てきた。そして少し力が抜ける感覚があった。


これを植えればりんごの木になるのかな?そう思って地面に落とすと…


「ちっさ」


ちっちゃいりんごの木が生えた。ちっちゃいりんごもなっている。


「これは……」


あれか、使う力の量によるって感じか。前回の暴走が怖くて恐る恐る魔法を使ったからこんな感じになったのかな。


「ふっ」


今度はもう少し力を込めてやってみる。出来た。地面に落とすとちょうどいい大きさの木になった。りんごを一つ取ってかじると、ちゃんと甘くて美味しいりんごだった。この味なら全然生きていける。


「ふぅ」


結構疲れたが、これで食料は調達出来たぞ。そしていま思い付いたが、この成長速度なら何かに襲われた時とかに壁を作ったり出来そうだ。




そうした試行錯誤の結果、硬く壁になりそうな木の種、トゲトゲの植物の種を開発した。イメージは針葉樹やイバラを持つバラだ。


一応の為に木10個イバラ5個を作り置きしておいて、両側のポケットに入れた。



因みに結構魔法を使ったが、かなり疲れている。案内人が言っていたのは魔力をたくさん使わないとちゃんとした植物にならないという事なのかな。


そろそろあの宿に戻るか…そんな事を考えて、宿に戻っていると、


「キャアーーー!!!」


なんか聞いたことがある悲鳴が聞こえてきた。





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