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留学先は異界でした  作者: 成谷(ナルヤ)
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第3話 死後の世界



———————————————————————


暗闇の中大きくそびえ立ち、開かれた門が有無を言わさない荘厳さを漂わせている。


そしてその前に浮かぶ数多の魂が、その雰囲気を確固たるものにし、生と死を司るに相応しい佇まいを示す。


ここは亡き者達の魂が集められる場所、生者から『運命の門』と呼ばれている。


その役割は、死んでしまった生き物の来世の運命を死神が決め、魂を転生させることである。


当然、死ぬまでに良い行いをしていれば良い来世が待っている。そして、逆も然りだ。


しかし、何が良い行いで、何が悪い行いかという事は死神が決めるので、本当に運命は『神のみぞ知る』である。


そんな運命の門に、今日もまた一つ、迷い込んでくる魂があった……




***



「どう言う事だこれは」



向こうには巨大な門、そしてその手前には夥しい数の狐火の様なぼやけた光がふわふわと浮いていた。


今まで真っ暗な荒野にいたのに、さらに現実離れした光景を見て、理解が追い付かない。


そしてそこに追い討ちをかけるように、


「身体が、無い……」


気付いてしまった。自分自身も狐火の一つである事に。


「これは俺、死んだな」


本能と理性、両方で理解してしまった。異世界に来てこんなにも早く死んでしまうとはね。まああのまま飛行機に乗っていても死んでいたと思うけど。



しばらくして、



「とりあえず行ってみるか」


俺の周りの狐火達は皆門に向かって進んでいた。門をくぐると狐火は消えていた。何処かに転移でもされているのだろうか。どうなるのか不安ではあるが、ここにずっと居ても何も始まらない。


ふわふわと門に近づいていく。

自分の意志で動いているのに、勝手に誰かに動かされている様な、なんか変な感覚だ。スムーズに進むから逆に不自然。みたいな。


…周りにいる他の狐火も俺と同じ元人間なんだろうか。それとも犬とか猫とかの動物もいるんだろうか。そもそもここってどんなところなんだろう。


そんなことを考えながら進むと、門の手前に着いた。


「おぉ」


因みに一つ気付いた事がある。門の奥は何も無いと思っていたが、実際は変な建物があった。増築を繰り返したような全体的にいびつな建物で、統一感がなく、あるところは和風の障子と瓦屋根の部分、またあるところには西洋風のレンガ造りな部分やステンドグラスがある部分など、色々な文化を感じる建物だ。いくつか全く見たことのないところもある。巨大な木の中をくり抜いた部分とかね。


でも全然ミスマッチとかではなく、とても神秘的な雰囲気を醸し出していた。





近くに来てみても狐火は門をくぐると消えていた。見間違いではなかった。


くぐることに不思議と恐怖感はない。ここが特別な場所だからだろうか。疑問は尽きないな。


「よし、行くか」


門をくぐるとそこには………






シュパッ!


「誠に申し訳ないっっ!!!」


ドン!


「へっ?」


気づくと和風の部屋の畳の上いた。

そして目の前にはシュパッと高速土下座をした和服にちょんまげの武士みたいな()()がいた。





…そして勢いよく頭を畳に打ち付けていた。


「この度は我が部下の不手際でそなたを死なせてしまった。」


「誠に、誠に申し訳ないいい!」


ドン!


「誠に申し訳ない!」


ドン!


「…」


少し放心していると…


ドン!


ドン!


ドンドンドン……


「いやもう良いから!」


ピタッ、


「許してくれるか…?」


「う、うん…」


「かたじけない…」


すげえ奴だな…


そう思っていると、和服の人はふらふらと体を起こし、語りかけてきた。


「混乱しているか?そなたとっては分からない事だらけだろう。無理もない。」


あんたの行動が一番混乱させたんだが…


「そなたが今しがたくぐった門は『運命の門』という。そしてその門の前には、死者の魂が集う。つまり…」


「俺は死んだってことか」


そうだろうなと思っていたが、こう面と向かって言われると実感がわく。


俺死んだのか。


「そうだ。死因は…生命力を使った魔法の行使だ。」


「なんだそれ?」


「そなた達転移者は分からんだろうが、魔法は本来体を動かす運動と同じで使っても疲れるだけのものだ。しかし特殊スキルと呼ばれる魔法を使うと高い効果の代償に生命力などの重要なものを消費する。」


「ほう」


「生命力というものは、平たく言うと寿命のようなものだ。そなたはそれを知らずに自分の身に余る魔法を使ってしまったのだ。」


なるほど。確か俺は魔法を使うときあの荒野一帯をオアシスにしようとイメージしていたな。流石に俺の体力だけで出来ることではないだろう。説明もちゃんとしてるしやべぇ奴ではないのかもな。


「でもブック?とかいうやつの案内にはそのくらいのイメージで行けって言われたんですけど…」


「それなのだ。それが拙者が誠に申し訳ないと言っている理由なのだ。我が部下はそなたが特殊スキルを持っているとは思わなかったそうだ。確かに普通の魔法ではどんなに大きなイメージでも生命力を使うことはないが、色々な場面を想定したアドバイスをしなければならなかった。」


アドバイスするほうも大変だな。


「そこまで言うことでもないですよ。そもそもあの案内人がいなければ結局死んでいたでしょうし。案内人には感謝してますよ」


話していて緊張がほぐれたし。


「…そなたは心優しい魂だな。……これは惜しいな!」


「ん?」


「ああいやこっちの話だ…」





武士は少し考えて、言ってきた。


「そなた、生き返りたいとは思わんか?」


「まぁもう少し魔法を使って見たかったなっていうのはあります。」


すると急に、


「そうか、そうかそうかそうか!ではそなたに生き返るチャンスをやろう!」


何か嫌な予感がするぞ。


「あーやっぱりもう少し考え」


「そなたにはもう拒否権はない!そなたの魂が拙者の言葉を受け入れてしまったからな!はっはっは!」


「はい?」


「なに、そんなに変なことはせんよ。ただ、そなたが本当に生き返る価値があるのかテストさせてもらうだけだ!」


「そなたを含め何十人か候補がいる。候補には仮の体を与え、ある街の冒険者として生きて貰う。その中で生き残った者を本来の体に戻す!」


「これが、拙者がそなたらに与えるチャンス、『生存バトルロイヤル』だぁ!」


マンガだったら『ドン!』と背景に出てきていそうな雰囲気で、武士は言い切った。


「えっ?ちょっとまっ」


「ルールは、他の街には行けないっ!なにがなんでも最後まで生き残れ!それだけだ!」


武士は指を高らかに鳴らした。


「さあいくぞ!説明は十分にした。状況は皆ほぼ同じ。自分を信じてがんばってくれ!」


「十分じゃねぇ!俺の話を…き…けぇ…」



急に視界がぼやけてくる。






フワフワとした感覚の中、俺は一つ無駄なことを考えていた。







占いめっちゃ当たってんじゃん…



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