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留学先は異界でした  作者: 成谷(ナルヤ)
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第2話 オーバースペル



『ハロー。僕の名前は徳山八雲(とくやまやくも)。気軽にヤクモって呼んでいいよ。僕は陸上部に入っていて、足の速さには自信があるんだ。家で結構自炊するから、いつか日本の料理を皆に振る舞おうと思っているよ。色々とホストファミリーの皆に迷惑をかけてしまうかもしれないけど、どうぞよろしく!』


混乱して、頑張って考えてきた自己紹介を外国語でしてしまった。


ビュウウウー


風が吹く。


砂埃が舞い上がった。


沈んでゆく夕日がとても綺麗だ…




「どこだよ、ここ…」





俺、徳山八雲は人生最大の危機に瀕していた。


飛行機に乗っていた筈なのに、気が付いたら月の表面みたいな人の住めない土地にいた。

何かヤバい状況なのは分かるが、何をすれば良いのか全く分からない。



どこを見ても荒野、荒野、荒野…



呆然と辺りを見回していると、何か色合いの違う物があった。


「あっ!」


小走りで駆け寄る。


「リュック生きてたのか」


自分の手持ち用リュックが落ちていた。

何故ここに?という疑問はあるが、今はそれどころではない。

開けて中を確認する。


「俺のスマホが…」


バッキバキになっていた。

もう使えそうもない。


「それでいて何でお前生きてんだよ…」


透明なプレートが、無傷の状態で入っていたのだ。

なんとなく手に取ってみると、急に変に間延びした女性の声が聞こえた。


「マスターの指紋を確認しましたぁ〜」


「ウェェェイ!?」


驚いて、手を離してしまった。

なのに、プレートはその場にふわふわと浮いていた。


………



「健康状態を確認……クリア〜精神状態を確認……クリア〜数値化します〜……」



………ナニコレ?


しかし謎の音声は止まらない。


「数値化完了〜マスターの状態から、取得可能なスキルを検索……リストアップ完了〜表示中……表示完了〜」


漸く止まったみたいだ。


何?スキル?スキルと言えば日本語で技術か…いや技能だったような?いやでも技能だとすると取得出来るようなものでも無いしな……?


「いやちょっと待て」


現実逃避している場合では無いぞ俺。

目の前に浮くプレートを見る。

飛行機に乗る時まで書かれているのは自分の名前だけだった筈だが、今は違っていた。



=======================================


徳山 八雲


レベル:17


生命力:100

瞬発力:300

持久力:100

魔力:2600


スキル:なし


特殊スキル:なし


称号:〈異世界転移者〉



取得可能スキル:〈大地魔法、天空魔法、海洋魔法〉から一つ



=======================================



「おぉ」


これは自分のステータスでいいんだよな?

そうなると称号の所に異世界転移者と書かれているということはここは地球じゃ無いのか?


「マスター、ここは異界アーブルースですよ〜」


「⁉︎…お前まだ喋るんか!」


びっくりさせないでくれよ…


「はぁ〜それはマスターが臆病過ぎるだけです〜」


なんか凄く呆れられたんだけど…

俺だって好きでこうなったんじゃねぇし…てかめっちゃ俺の心読んでくるしこのプレート本当に何なんだ?


「私は称号〈異世界転移者〉の効果で呼び出された、異世界案内人です〜。私の仕事は、マスターのこの世界の疑問に答えることなのです〜」


「へぇ」


この異世界には結構良心的なシステムがあるみたいだ。


「この機能に制限は無いのか?」


「あと30分でこの機能は停止されてしまいます〜それ以外の制限はありませんよ〜」


「うん?かなり短いな!」


「本来はこの世界に来てから24時間なのですが〜。マスターは気絶していたのです〜。」


「…」


つ、つまりあと30分のうちにこの世界についてある程度知り、この荒地で生きるすべを手に入れないといけないってことか。結構暗くなってきたから急がないとな。…にしても俺かなり気絶してたんだな。


「まず生きるのに必要なのは水と食料だよな?」


「そうだと思います〜。少なくとも水は魔法で入手出来ます〜。マスターは魔力がとても高いので、簡単に入手出来るんじゃ無いでしょーか〜」


「魔法?」

魔法ってあれか?俺の想像しているものでいいのかな?

気になるしとりあえずやってみるか。


「どうすれば魔法が使えるんだ?」


「まず取得可能スキルの中にある三種類の魔法種の中から一つ選んで取得するんです〜。魔法種とは、自分の得意魔法のようなものです〜。因みに、一度決めてしまうともう二度と決め直すことは出来ません〜」


「わかった。」


「基本的な魔法はどれを取っても使えますが〜強力な魔法は魔法種が合っていないと使え無いのです〜例えば〜天空魔法使いは空を飛ぶ魔法が使えたり〜強力な雷魔法が使えたりします〜」


「他の魔法は?」


「海洋魔法は水を使う魔法が他の魔法種より強力になり、回復魔法などのサポートも得意になります〜」


「大地魔法は汎用性が高い魔法を多く覚えます〜。また、植物などを操る事が出来ます〜」


空が飛べるのはかなり良さそうだな…海洋魔法も回復出来るらしいし、安全に生きて行けそうだ。聞いてみた感じ大地魔法は人気無さそうだな。


「マスターが思っている通り、大地魔法はあまり使う人はいません〜。理由は、天空魔法と海洋魔法が分かりやすく強いからです〜。それに大抵の場合、魔法種はこのプレート、ブックと言うのですが、これをもらってから初めて魔法種を選べます〜。しかしブックを手に入れるのは子供の時です〜。よって普通は親が大地魔法を選ばせないようにするのです〜」


じゃあ僕もそのどっちかから選ぼうかな。


「普通はそうなんですけど、マスターは大地魔法を選ぶのが一番良いと思います〜」


「な、何で?」


「大地魔法の場合、食料も魔法で得る事が出来るからです〜。魔法で作った食料は全然美味しくないし栄養も無いんですが〜、一応マスター一人分の食料にはなるはずです〜。」


もう一度辺りを見回す。こんな荒野に水や食料なんてあるはずが無い。他の魔法種を選ぶと、水は調達出来ても食料を確保する為に彷徨う事になるだろう。


「選ぶ魔法種が決まったら、プレートの選びたい魔法をタップして下さい。因みに他のスキルも同じように取得します。」


無言でプレートを操作する。これはもうどうしようもない事なんだ。


(〈大地魔法〉でよろしいですか?)


はい/いいえ、というところが出てきたのではいのところを押す。


(〈大地魔法〉を選択しました。スキル欄に使える魔法が追加されました。)


「これで良いんだよな?」


「はい、その後は使いたい魔法を頭の中でイメージすればいいだけです〜。…大地魔法は人気が無い分、まだ未知の部分が多いのです〜。もしかしたら他の魔法種より強いかも知れませんよ〜」


案内が慰めてくれた。逆にちょっと悲しくなった。でも今はそんな事を言っている場合では無い。


…まず、使える魔法を見てみるか。


=======================================


スキル:〈大地魔法〉

ウォーター、ファイア、ロック、ヒール、種生成、操樹


特殊スキル:〈大地魔法〉

生命の息吹


=======================================


「おお!」


しっかりスキル欄に大地魔法が追加されていた。水はウォーターを使えそうだな。食料調達に使えそうな魔法は…植物を生やすのは大地魔法しか出来ないはずだから特殊スキルにあるんじゃないかな?植物を生やせれば上手くいけば食料も手に入りそうだしな…まあ使って見ればわかるか。まずはこの辺りをオアシスにしたいな。


「特殊スキルはそんな意味じゃないですけど…しかも下級のスキルではオアシスなんて作れないですよ〜。でもイメージはとても大事なのでその勢いです〜」



よし!発動しろ〈生命の息吹〉そしてここをオアシスにしてしまえ!


「え?生命の息吹⁉︎なんで⁉︎」


案内人は驚いたように声を荒げた。


ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ!


うぉおおお!暗くてよくわからねぇ!

そういえばもう日が落ちてるじゃねーか!

でも何かが生えてきてる気がする!


「ちょっと待って下さい!マスター!早くその魔法を止めて下さい!」


ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ!


はぁ、はぁ、はぁ、何だこれ?頭がくらくらしてきたぞ。ずっとダッシュしているみたいだ。はぁ、はっぁ、は、ど、どうすれば止められるんだ?ヤバい。し、死ぬ…も、もう無………理。



ドサッ。


「マスター!しっかりして下さい!マスター!……」


聞こえてくる案内の声がだんだん遠ざかって行く。


勢いよく生えてくる瑞々しい木々とは逆に、八雲の生命力は勢いよく減っていった。


そして…0になったのだった。



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