プロローグ
それほどグロイ表現はして無いと思いますが、念の為に苦手な方はお気を付けください。
遠い過去の君へ、かつて国を繁栄させた祝福の魔女、あるいは破滅の魔女へ。
世界は魔女の力によって創世され、いくつもの時代を渡り歩く。
ある時は魔女の力で何世代にも渡り国を繁栄させ、別の時代では破壊の限りを尽くし、世界を破滅の渦へと誘う。またある時は力に気付かず、魔女としてでは無く生涯を終える。
その目的など誰も知らず、魔女の生まれた時代は力を我が物にしようと争いが起き、多くの犠牲を伴い、魔女を我が物にしようと血を流す。
この世界も、国も、どの運命を辿るかは魔女を手にした者だけが知る。
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数時間前までは街だったのであろうか、火柱が上がり旋風が舞う、瓦礫は人を飲み込み、赤黒く染めあげるがそれでもなお染色を止めず、一人の青年を中心に辻風が荒れ狂う。
赤く染まった地面は辻風によって血柱をつくり、周囲の炎柱で熱せられ血塊となる、その光景は見るも無惨。
自分のちぎれた腕を探しふらふらとさまよう女性。
逃げ惑う男、抱えているモノは幼子の型をしたグリル、父親なのだろうか、腕の中の焦げたモノに声をかけながら。
惨劇の中心で立ち竦む青年の上から、毛の生えた楕円形のような物体が落下し目の前を転がる。
「何だよ、これ……」
白銀の綺麗な髪、襟足は長く先端は赤く固まった頭部が目の前に転がる、青年の心は破裂しそうな程大きく鼓動し、膝をつき、倒れ込む。
「うぅ……うそだろ……」
辺りの悲惨な状況にも関わらず、まだ諦めきっていなかった青年の心を粉砕するには十分、思考は停止し、生きているだけの存在となった青年。目の前に現れた頭部を傍に寄せ、青年は小さな羽音と共に闇に包まれる。
「さようなら……こんな世界、もうどうでもいいや……」
青年を覆った闇は何処までも伸び、全てを呑み込む。