都市の喧騒と、もて余す自由時間
「なぁなぁ、腹減ったんだけど。 ちょっとあそこの出店で食おうぜー」
「いや、お前の喰いモノとかないだろ。 あんま騒ぐなよ、悪目立ちしたくないんだ」
「ねぇねぇ、 あのキラキラきれいだねー とじこめちゃう?」
「駄目よ。 いい子にしてなさい。 あの子も、何を考えてるのかしら…… はいはい、分かってるわ。 そうね、それでもいいかも」
「おいおい、俺の話も聞けよな!? おっと、すいません。 ほら、前見て歩けよー!!」
ぶつかってしまった集団に頭を下げる。なぜか懐かしい感じがしたんだけど、気のせいだよね。
「都市は賑やかですよね、いつ来ても。シーエさん達も驚かれたでしょう? それで、学院はどこでしょうか?」
メアリさんが口があきっぱなしの僕らに苦笑した後、首をかしげてアズサさんに問いかける。降りた時に比べて、格段に顔色が良くなっている。 一安心かな。
アズサさんは、彼女の問いかけに、疲れをーー いや、呆れかな?ーー 全く隠さずに答えた。
「あぁ。 この露店街を抜ければ直ぐだ。 あと、メアリ。 敬語は無しで。 ほら、私と同い年だし。 それで、バカ。 なにも買わないから、離れろ」
「えー、ヤダ!! ほらほら、あそこのカザクルマとか模様綺麗だし!! 買いたくね? 買ったら、学院で誉めちぎるけど?」
「うるっさいわ!! お前の喰い物、欲望なんだから自給自足しろアホじゃないのか!?」
彼女へ懲りずに駄々をこね、背中に引っ付いているシャンレイは、とうとう怒鳴られた。 路地裏へ引きずられて、 セイザさせられている。
長い説教のあと、 戻ってきて、 小さく気まずげに咳をしたアズサさんは、振り返って、一言。
「まぁ、どれぐらいに行く、と連絡もしていないことだ。少し、自由時間にしようか。 こいつには、私がついておく。そうだな…… あそこの武具店へ影が差したら、集合だ。 いいな?」
全員で了解し、ファリナとレイジュは、メアリさんと手を繋いで服屋へ走っていった。
シャングさん達とメイヤーさんは、待ち合わせ場の武具屋で、武器を見ている。
アズサさんとシャンレイは、 先ほどのやり取りをまだ続けていた。
僕は …… どうしようか?
しばらく考えた後、通りをまっすぐ進む。 学院はこの先だと言われたので、先に見ておきたい。 影の様子を見ると、まだ時間はあるようだった。それにしても、自由時間は、いつももて余してしまう。




