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Eaters Eaters  作者: Athla
彼から消えた彼女と、彼だけがいた彼女
43/52

~いなくなったはずの、ヒト~

 いつもは置いているレイジュの裁縫セットが、机の上にいない。 代わりに今は、葉っぱや石、鉱物に絵、砂糖や塩…… 様々な"べモノ”が、不安げに揺れる夕焼けに照らされて、所狭しと並んでいる。

それらを満足気に見回して頷いたメイヤーさんは、口を開いた。

「さて、メイ。この中から、食べられるものはあるかい?」

 その言葉を聞いて、彼女はおぼつかない足取りで、葉っぱを口にした。それを見て、僕ら兄妹は、被っちゃったから少し我慢しないとね、なんて苦笑いしていた。

ー - 彼女が、 そのあとすぐに、 砂糖や塩を舐めて、ケロリと平気な、顔をするまで。


 僕らは、”Eaters”だ。 ヒト -- 人間から創られ、 どれだけ彼らに近い外見を持ち、生活を送っていようと、決定的な差がある。 

 ”Eaters”は、ヒトでは喰べることができないものを喰べられるようになった。 けれども、何かを出来るためには、代償は確かに存在する。 このことだって、例外ではなく。

 僕らは、一つのものしか、生涯、栄養にできない。液体ーこの前、アズサさんのくれたミックスジュースとかはあくまで味を楽しむための贅沢品でしかなく、生きる糧にはならない。そしてそれは液体や気体だけ。概念喰い達は固形物なんぞ絶対に口にできない。僕だって、木以外は食べられない。

栄養にならないだけでなく、反対に体力を奪われるから。 だから、別のものを口にした彼女はそれこそ、すぐに倒れ込むか、顔が真っ青になるはずなのだ。

なのに、そうなっていない。


そして、こういうことから、導き出せる結論は …… 本来は、あってはいけないものだ。 なのに、それしかあり得ない。

メイは、ヒトだ。 僕らが出来てから、しばらくして、いなくなった ーー 滅んだ、はずの。



「どう、するんだ、 それで?」

何時もよりアズサさんの歯切れが悪い。 まぁ、当たり前だよね。考えながら、窓から星を見上げる。

あの後、黙りこくってしまった僕らを心配したメイは、軽く泣き出してしまった。 本当、小さな子供だ。何とかメイヤーさん達が寝かしつけてくれた。今は眠っていて、僕らは彼女にヒミツの会議中。

悩んで、これ以外に策が思い付かなかったから、言ってみる。

「都市に、一緒に連れていきませんか? 情報が多いですし。

それに、きっとアズサさんにも、役立ちます。

ずっと、不思議だったんです。 話してもらった新興宗教が、何故流行るのか。

普通なら、誰も信じないですよね。 デメリットが大きすぎます。 でも、もし、その宗教が、メイみたいなヒトを見つけていたなら …… 」

「なるほどな。 では、そうしよう。 明日、出発するぞ」

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