~僕から消えた彼女と、 僕だけがいた彼女~
ん、 と軽い声が聞こえた。 ベッドから起き上がって頭を左右に振っている彼女へ、声をかける。
「 気がついた? ここは僕のお家。 倒れている君を僕の知り合いが見つけて、 ここまで運んできたんだ。 えっと、 …… 」
言い終わらない内に、 いきなり抱きつかれた。 思わず固まってしまう。続けられた、 彼女の言葉には目を見開いた。
「シーエ…… 会いたかった!!」
僕の言葉を消すように、タイミング良いのか悪いのか、 開かれる扉。
「シーエ。 嬢ちゃん、 起き…… ……
あー、オジャマシマシタバクハツシヤガレ」
すっごい睨まれた後、 カラコロと遠ざかっていった彼に、 身を震わせた。
「メイヤーの姐≪あね≫さんとか呼んできた。 ガキんちょどもの世話が忙しいらしくて、 後で来るってよ。
で? 嬢ちゃん、お名前は? それと、シーエといつ、 何月何日何時何分何秒に、どこで知り合った?」
時計が無いのに、 時刻が分かるわけないでしょう、 シャンさん!! 僕の呆れをたっぷり込めたため息に、彼女が気遣わしげな視線をくれたから、慌てて笑顔をつくる。 ホ、と吐息をついて、彼女は眉を下げながら答えた。
「 …… シーエはメイって、 呼んでた。 出会った場所、は…… 覚えてない」
「じゃあ、自分が何のイーターかは分かるかい、メイ?」
「わかんない。 シーエのことしか、 覚えてない。 シーエ、私は、 メイは、何なの?」
親を求める子供の声に、 僕はなにも言えない。 だって、 だって彼女から僕以外が消えているのと対になるように、 僕からは ーー 彼女が消えているのだから。




