~語尾=第一印象な ウソをつかない動物~
「何やってんだい、本当に。 シスコン軍師も、 ヘンテコ野郎も」
おいおい、 俺って変かい? という声から続く抗議を聞き流しつつ、 姉貴分へ頭を下げる。
「すいません、 メイヤーさん。
それでウマくん。 ウサギからの頼みって、 どういうこと? 君がレイジュに迷惑かけたの? じゃあ、 どうしなきゃいけないか分かるよねぇ? 」
「落ち着いてよ、 兄さん。 私はそんなに困っていないから。 ウマさんのこと、 許してあげてちょうだい? そんな風に距離つめて追いつめないで、 ね?」
「いやいや、 レイジュ。 お前の、 最高位階職人の商品を無下にしたんだ。極刑までとは言わんが、罰が要るだろう。 いいか、ウマ。 貴方が何であれ、どんな些細なことであれ、 行動や権利には責任が伴う。 したことの、 責務を果たせ」
「アズサさんまで…… ウマ呼びしないでほしいウマ!! これ、にかいめウマよ!?」
第一印象って、やっぱり大事なんだなぁ。まぁ、 今はどうでもいいけど。
「いいから、その山貸して。 妹の苦労を叩き込まさないと。 どんな手を、 使ってでも」
目の前の四ツ足だけじゃなく、 後ろの仲間まで、 何故だか震えていた。 ……これぐらい、 兄として当然なのに。
とりあえず、固まったウマを退かして、 布を丁寧に剥ぎ取る。 そこにいたのは、 自前の金色ふわふわ髪を抱き枕よろしく握りしめて寝ている女の子。 僕らと歳は同じくらいだろうか? 見馴れない顔だ。不審者 ……には見えないし、 それなら、動物達が守る理由はない。
「一体誰なんだい、この子は?」
「分かったマ。 話すウマよ…… その子は、ウサギ達が連れてきたマ。 倒れる前に、 隠れなきゃいけないみたいに口走ってたそウマ…… それで、 ここらじゃ最高のレイジュのハイドエンチャントの布を少しいただいて、 誰にも見つからないよう、交代で監視してたウマ」
やれやれ。 どうして早く言わないのかなぁ。
「一見すると、ウソくさいけど、 生憎お前らはウソをつかないんだっけか。 何か、大事≪おおごと≫じゃね?
…………あぁ、 うん。レイジュが関わってた時点でそうだけどそりゃ」
「シーエは何も言っていないぞ、グータラ。 にしても、 綺麗な髪だな。さわり心地い …… コホン、 この子、どうするんだ?」
「家で見ましょうよ。 何のイーターかは、起きてから訊かなきゃだけど。 疲れてるみたい。アズサ、 喰べれる?」
もちろん、という声の後、顔が少し穏やかになった彼女を抱き抱えて、家へ向かう。
目覚めるのが楽しみだな。 そろそろ暖かくなるのに、 出発は少し延びそうだけど。




