〜子供の企みと、荒事喰い〜
「やれやれ。君の演説のおかげで、士気は上がったけど、都市組は使えないか。」
「あー、俺らが主力で策たててた?」
首を傾げて訊いてきた。レイジュがやったら可愛いのに、どうしてこのグータラがやると違和感しかないんだろう?
「そんなことない。逆に土地勘が無いとちょっと不味いんだよ。欲言うと、ファリナちゃんは使いたかったけれどね。」
そっか、と笑われて肩に手を置かれる。返ってきた一言は、なんともこいつらしかった。
「喰おうか?その欲。なんか旨そうだし!」
さて、無事に腹ペコ自由人を引っぺがせた所で、作戦開始だ。
ここは、軍師盤の中。初めて入った時に作ったリイン村の地図を上から見下ろしている。
入り口でもある一本道、そこの両脇には崖がある。その上は野原になっていて、遊び場としては危ないけど、奇襲場所には最適だ。但し、子供限定だけど。
「味方部隊K、リンク。みんな、聞こえてる?」
〔シーエ!聞こえてる。ミリアのエミッションも、いい感じで溜まってきてるよ。これをドカーンだな!〕
聞こえてきたのはレーグ君。目が良くて、アズサさんには弓矢を叩き込まれてた。ちなみに、ファリナちゃんと同系統の音喰い《サウンズ・イーター》。各個撃破の要になる。なんせこの道狭いから、3人で並んで通るのは厳しい。けど、それ故に声が通りやすい。そこを何とかしてもらう。
「よろしく頼むよ。活躍したら、うちの商品割り引いたげる。」
[アハハッ、シーエ、オヤジたちとかにはいつもオマケくれてるんだろ?バレバレだかんな。
村がどうにかなるんなら、守るのは村人のしなきゃいけない、あたりまえって、アズサせんせい言ってたし。やるよ、俺は。
足音聞こえた。そろそろだと思う。
喰い放題だよな!?すげぇゼイタク!!]
「そうだよ、都市の貴族だって滅多にできないんだ。お腹いっぱい喰い散らかすと良いさ。任せたから。」
そう応えて、子供ながらに無邪気で楽しげな声を、頭から別れさせる。
一瞬頭によぎった桜色のあの子が、僕を震えさせた。
「はやく来てください。あの子達が、地獄になる、慣れる前に」
僕の願いは、赤い空だけが聞いてくれた。
「にしても、女騎士、美人なんすかねぇ、団長!?」
村から少し離れた森林内で野太い声が騒ぐ。一番前を歩く男は、片手を振って黙らせた。
「さぁな。どっちにしろ、仕事を達成して生きてけりゃ万々歳だ。ま、小さい村だ。手こずることはねぇだろうと思うが、手は抜くなよ?」
前のでかい軍がいた所では、若い兵士から直ぐにそいつの居場所が聞けた。代わりのようにそいつの叔母とか言う美人が、山を塞いじまったが、まぁ平地を歩くのは慣れてる。ちと時間はかかるがな。
「にしても、大将が先頭ってのは、戦闘の際どうなんすか?そのキシサマに抵抗はされるでしょうから、引っ込んぢまった方が」「そっちの方がいいんだよ。俺が勝てなきゃお前らは不味い。俺が勝てればお前らは楽に生きれる。それに、
元兵士としちゃあ、戦いの先陣ってのはご褒美なんだよ!」
間は一拍。すぐに、あんたらしいと笑い声が響く。
その後の何処の酒が美味いとかいうたわいない会話に笑いながら、彼は合間に独りごちた。
「どっかに俺のようなはみ出し者を拾ってくれる長は無いかねぇ。その騎士がそうなら、考えてもいい。」
彼は、シャングラーヴ・ライアット。
此処とは別の国の、元兵士。
食糧は、荒事。
戦喰い《ライアット・イーター》、
別名を戦乱喰い《ウォー・イーター》。
多くの傷が遺された短剣が、彼の武器である。




