〜詐欺師にだけはしたくないネコの演説と、聖日〜
「ま、演説ネタのある日に攻め込んで来てくれたのは、ありがたいこった。」
ぼやきながら、広場を見る黒猫が一人。
なんかあったっけ?こいつ、なんでか旧世界のこと、詳しいんだよなぁ。
格好は見慣れない軍服。赤は変わらず、生地が上等になっただけなのに、雰囲気変わるんだ。ただ、首の辺りがすごい窮屈ですって顔に出てる。そこは、この友人らしくて、少し笑えた。
少し、観劇と洒落込んでみようかな。
「えー、この度は集まりいただきありがとうございます。・・・って、やっぱこの口調慣れないな。普通に戻していい?
誰だよ、笑ったの!?あー、レーグの親父さんかぁ!んー、前の小物の整理、ボランティアじゃなくて有料で!」
また、笑い声が響いた。おーい、君の役目は士気を上げることだよ?
「さて、笑える時間は終わり。
今回集まってもらったのは、あなた方の、リイン村に、山賊が下から襲いに来るらしい。上の山から来ないのは、まぁ、色々の山賊事情があるんだろ。
で、今回、俺らは手伝わない。
村の人達だけに退治してもらう。」
ざわざわ、ガタガタ。揺れる群れ。
「確かに、俺たちがするなら、あんたらは安全だ。今だけな。
俺とファリナ、アズサ先輩はとてもよくしてもらっている。でも、所詮は余所者だ。ずっといる訳じゃない。分かるか?
ここじゃ一番の戦力になるだろう軍師と付加師の兄妹も、女用心棒も、雪が解けたら、外に出ていく。帰ってくる保証はないさ。何事にも、絶対はない。だろ?
だから、アズサが鍛えた。
正直、都市の出入り検査官、都市内でも雑魚レベルになればまぁいいと思ってたんだが、すいません。見くびってました。
貴方達は、とても強くなった。俺らでも、都市軍術学院首席と十番代でも、総出になって攻め込まれたら、持ちこたえられるか怪しい。
今日は、旧世界じゃ聖日だ。あるお偉いさんが若い兵士の恋人づくりを禁止したご時世に、逆にそれを奨励した人が始まりだって言われてる。
俺さ、その人すごいってか正しいと思う。
だってさ、恋人だったり、家族だったり、守るやついた方が士気上がるに決まってるし。
男の中には、若いしか取り柄ない奴もいるんだから。 はいはい、俺がその筆頭でいいよ。
あんたら、守るやつが真後ろにいるんだよ。だから、誰よりも強い。
山賊くらい蹴散らせるよなぁ!?」
彼の煽りに、人々が大歓声で応える。
やれやれ、大した詐欺師だよ。




