〜忘れかけていた代償〜
「あ、メイヤーさん。いらっしゃいませ。どうですか、兄さんの方は?
なんで、メイヤーさんがおぶられているんです?!
何かしたのね、ぐったりして!!
申し訳ありません、メイヤーさん!
うちの愚兄は、煮焼きはダメですけど、お仕置きくらいなら … いえ、やっぱり、いっそ制限無しでお気の済む迄、存分にどうぞ」
「落ち着きなって。本当あんたはシーエが何かやらかすと、そう過激に走るねぇ。
リンク酔いだ。地図作成は今まで見たことないくらい詳細だったよ。もっとも、よく知ってるこの村だからってのもあるだろうが。頭痛が酷いらしい」
「薬とかウチには無いですよ。
アズサ、ごめん!頭痛に効くもの何かない?」
二階に向かって叫ぶと、すぐに紅茶色が降りてくる。
「どうした?あぁ、シーエが頭痛か。
私にリンクしたんだ。大概あの後、軽い頭痛が残るんだがそれが無くて。
肩代わりが行われたんだな。それか、体質か。もし前者なら、し ー ー あの方も酷というか、イタズラ好きは変わらずと言うか。後者なら、慣らすしかないぞ。
で、すまない。私の食い物のせいで、うちの部隊は不調と疲れ知らずでな。荷物もかさばるから、薬は持っていかないんだ。
私がそちらも喰えればいいんだが、ダメでな」
「そっか … アズサは悪くないよ。良いことだと思う。疲れてるのにごめん」
「いいさ。頼ってくれて嬉しかった」
「あんたら、ホントいい友達になったねぇ。
それは喜ばしいけど、どうするんだい?」
少女二人が、すぐに目をあちこちにやると、昼寝をしてきた猫が窓から入ってきた。
「ん〜、何だよ、井戸端会議ってやつ?
うわっ、シーエ倒れてんじゃん!?
おいおい、アズサ。お前さ、こいつに厳しすぎね?」
「はぁっ?! 貴様、本当にバカだな! シーエは酷い頭痛で倒れてるだけだ! 大体、昼間のことも説明したぞ! もう忘れたか?」
「忘れてないし! からかっただけだし!
冗談分かんないセンパイこそ、「シャンレイ。それ以上言うなら、本気を出させてもらおうかねぇ?」すいません。
でもさ! 異議あり! アズサ、シーエに甘いんだって! 俺だったら、昼寝で5発くらうぞ?」
「さっき自分が言ったこと、忘れたか?
他の奴にはシーエと同じようにしている。お前は特別だ」
「え?」
「遅刻魔サボり魔、授業出ても寝るばかりのグータラ猫だからな!」
「期待した俺がバカでした!
んでさ、頭痛ならヤナギが効くぜ。ウサギに頼んどいたから、そろそろ来るんじゃね?」
「シャンレイさん、ありがとうございます!! お礼「しなくていいぞ、レイジュ。こいつのカンと悪運は異常だ。
それより、ファリナを見に行かないか? 上で寝ている。可愛いぞ」
「あ、じゃあ、兄さんをお願いします」
「持ってきたわよ!」
「ありがとな! 代はこれでいいんだろ?
メイヤーさん。砕いて水に溶かしてくれません?」
「もうやってる。しかし、ヤナギは何かしら副作用があったんじゃないかい?」
「あー、やっぱりですか。俺、何か忘れちゃって。覚えてます?」
「いや。使ったのは何年も前だからね。ま、この頭痛をどうにかする方が先だろ」
そう言い、銀色が薬草水を飲ませて部屋を出ていく。
いつもなら広いベッドを占領する居候は、床に寝そべった。
そして、翌日。
「痛い痛い痛い痛い痛い!」
「え、あっれ、おかしいなぁ?
頭痛薬ってアレだと思ったのに」
「頭痛は引、いたい! 胃! 」
「胃 … あぁ! 思い出した!!」
「おはよう、兄さん、調子は?
どうされたんです、シャンレイさん?」
「おはよ。シーエは頭は平気だけど、胃がやばいって。
忘れてた。昔の【かがくやくひん】でヤナギは頭痛薬だけど、胃も痛くするから、胃薬と混ぜたんだって。」
「てことは、他の薬にもあるんですね、いいところと悪いところが」
「薬だけじゃない。世界中のものがだ。
ま、シーエ。お前、それで死ぬわけじゃないだろ?」
まぁ、そこまでじゃない、たぶん。
どうにかして頷くと、半分潤む視界の中で、いい顔をした彼は、爆弾を落とした。
「ん。じゃあ、そのまま放置な! 寝ときゃ治る!」
結果として店での僕担当のスペースは、一週間、休みになりました。
その間、お見舞いが来てちょっと得したかも、なんて嬉しく思ってしまったのは、秘密だよ。




