〜本当の友達と、軍師盤〜
「全く、酷い目に遭った。お前もさ、見てるだけってどうよ? 助けてくれたら良かったのに」
「あれに割り込んだら僕まで怪我するだろう。
君、運動神経あるんだな。すごいよ、シャンレイ」
なんて褒めると、さっきまでの不機嫌は何処へやら、こっちまで笑えるぐらいに顔が緩む彼。うん、この気分屋の友達の機嫌の取り方が結構分かってきた。
「ま、まぁ、軍入ってるし! なぁなぁ、やっぱもう一回言いたくなんねぇ?」
「ならないよ。君さ、大分単純だよね」
「それ、知り合いにもよく言われるんだよな。お前の方は、毒舌隠さなくなったろ」
何を今更、と返す。それもそうか、と苦笑いが浮かべられる。
「シーエ! ここに居たのかい。あんた、エミッションの操作法は憶えたようだね。アズサから聞いたよ。
さて、渡したいものがある。それの使い方も教えてやるから、ついて来な」
メイヤーさんに言われて立ち上がる。
シャンレイの姿が見えなくなってから、
楽しげな声と一緒に、肩へ強い力が届けられた。
「あんた、本当いい友達が出来たねぇ。大事にしなよ。
本当の友ってのは、一生に関わってくる」
返事して、あいつへ言わない本音を誰にも言わずに呟いた。
本当、初めてだよ。あそこまで気を使わなくてもいい奴は。
「お邪魔します。メイヤーさん、それ、何ですか?」
彼女が持っていたのは、丸い円盤にボタンが沢山ついたもの。バンダナみたいなものと黒い絆創膏は、それと繋がっている太くて丈夫な紐が付いている。引っ張っても切れない。
「手荒にはしないでおくれ。これはね、軍師盤」
「ぐんしばん、ですか?」
「そうさ。ま、ガイドリーダーとか、メモリーコマンダーとか呼び名は色々ある。あんた【じーぴーえす】は知ってるかい?」
「人が今どこにいるか分かる道具、なんでしたよね?」
「正解。それ、今でも使えるんだよ。なんでも、空の上にいて情報を送ってくれる機械がずっと動いているんだとさ。それによって、戦場の様子を現在進行で映し出すのがこいつ。本当は受信機が要るそうなんだけど、どういうわけか、誰の位置でも分かる」
「そうなんですか。沢山付いてるボタンは人の名前を、この丸いのに教えるために?」
「いや。アイツ、これの前の所有者がこれを押しているのは見たことないね。指に巻くのは、自分や味方以外に使えなくさせるためらしい。あたしは登録されてるから、起動して設定を弄っておいた。指にこれ巻けば、これはあんたのもんだ。こいつには、地図作成機能と、ちょっと驚く機能も付いてる。詳しくは、こいつが自分から教えてくれるだろ。」
仕事道具と同じ扱い、いわば相棒になるわけだ。巻く前に様子を見ておく。
傷はほぼ無い。細かいところにも埃は無い。前の方、大事に使っていたんだな。
「前の方に大事にしてもらえて良かったね。
僕も大事にするから、力を貸しておくれ」
指に、黒いのを巻いた。なんとなく、頭にも。
〈CONNECTION ACCEPT.
I START FIRST LEACTURE !!〉
訳のわからないグニャグニャしたものの列が
見えて、メイヤーさんが、視界から消えていった。
ん?
今の変なグニャグニャに似たもの、初めて会った日、シャンレイも日記に勝手に書いていってなかったっけ?
引っ張られるように、ゆっくり倒れた弟分を受け止めて、長い尻尾を一つ揺らした女性は囁いた。
「これで良いんだろうかねぇ。あたしは、あんたらみたいに賢くないから分からない。
頼むよ、ミリーナ」
少し重くなった空気を振り払うように、軽い足音が忙しなく近づいてきた。
「おかあさん、エミッション出たんだよ、きょう!」
「おぉー!! すごいねぇ! 今日は特別大きいダイヤでいいかい?ミリア」




