〜うたた寝と、一番容赦ないのは子供たち〜
「いいか? エミッションを自分の意思で出すのは、そんなに難しくはない。
身もふたもないことを言えば、イメージ力と集中力勝負だな。
自分のエミッションが外にある様子を想像するだけだ。 さ、できるかな?」
みんなを挑発するように楽しさを含んだアズサさんの声を聞いて、目を閉じる。
どうせなら動物の形してたら子供達が喜ぶかな、とか考える。にしても、眠い。逃げたいって気持ちは、ほぼ無理矢理に、シャンレイのおかげで、消えたけど。あいつに喰われたら倒れてしまうの、どうにかならないかな?
あぁ、眠い。目を閉じているせいで余計に。
いつしか頭の中に、霧がかかっていた。
「わー! すごい! かみのおおきなうさぎさんだぁ!」
「あはは! 鳥が、うさぎのみみにぶらさがってる! なにあれ、アズサせんせい? ふくろうかな?」
「さ、さぁ … その、私は動物にあんまり詳しくなくてな。皆がよければ、教えてくれないか?
おっと、その前に。
起きろ、シーエ!! あのネコの昼寝癖が伝染したか!?」
みんなの声と、ほっぺたを思いっきり引っ張られたので完全に起きた。
すると、目まで真っ白なウサギと目があった。驚いたけど、まずは身の安全確保!!
「す … すいません!! アズサさん!」
「いや、いい。エミッションは出たしな。うたた寝とは感心はしないが、良い手だ。お前、本当器用だなぁ」
「あ、ありがとうございます!
あの、これ、どうやって出たんです?」
「どういたしまして。
そうだな。始めに普通の四角い紙が大量に出て、それがこう、組み上がっていった。レイジュではないが、 【かめら】 でなく今回は【びでおかめら】が要ったな。何はともあれ、合格だ。迎えはアイツが来るだろう。チッ…噂をすれば」
「シーエ! これ、紙のウサギ? やるじゃん!あれ? 頰、赤くなってるな … おい、アズサ。出来たやつを殴りまでするのかよ。暴力的すぎじゃ ー ー うぁっ!?」
店の方から来たシャンレイの靴、爪先ギリギリのところに矢が刺さった。
「私が子供の前で容赦するかと?切り傷ぐらいは、みんないいかい?」
「はーい!!」
「ちょっ、都市の話してやってるだろ!?」
子供の無邪気さって時に怖いよね、とか思いながら、シャンレイと矢の追いかけっこを見物させてもらった。




