〜毛皮喰いの犯人と、都市の安全を何とかしてるのは実は一人の女騎士なんじゃないかって考え〜
「あの、犯人に心当たりが?」
疲れたような顔をするアズサさんに、おそるおそる聞いてみた。
「あぁ。私達の学院の者だ。クラスが同じではないがな。
名は、ギンナ・ファーレオ。太っている。どうでもいいか。
あいつの父上は立派な人徳者だ。本人は優しいというか、なんというか。
毛皮喰い《ファー・イーター》のくせに、動物が好きでな。食事のたび泣きまくるんだが…結局喰っているではないか!! 結果が変わらぬ以上、潔く食わんかあのアホウ!!
近頃流行りの宗教だけでこちらは手一杯なんだぞ!? あ、この近辺は流行っていないな?」
「お、おつとめ、ご苦労様です。
神様だのなんだのは知りませんし、信じる気もないですよ」
「あー、 あの風船野郎か。自分が重いのに、服まで重そうだからバカだと思ってたんだが、マジでバカだな。
んで、シンコウシューキョーって?」
「知っておけよ」
諦めたような顔でシャンレイに説明するアズサさん。途中でまたお説教入って長かったので、まとめるよ。
⚫︎近頃変な宗教が流行っている。
⚫︎信念:元々ヒトはいろんなものを食べれたから、自分達イーターも出来るはずだ。
「つまり、その宗教にギンナさんも、その」
「あぁ。入っている可能性がある。で、毛からガラスに変えようとしたんだろうな。噂だが、あいつの歯は柔らかいそうだ。ガラスなんぞ喰ったら、マズイと思うんだが、少し痛快だな。
ん? どうした、シーエ。震えて。寒いのか? 」
あ、いえ、と返す。
「なんだよ。お前が帰れば全部解決じゃん。じゃあ、シーエとレイジュ来れねぇの? 会わせたい奴とか、案内したいところ、結構あんのに」
「ん? どういうことだ」
シャンレイが色々と説明している間、妹を見にいく。
さっきのあいつの小さな子供みたいにスネた顔は貴重だった。あとで絵にしよう。
「ごめん、ファリナちゃん。そろそろ、起こしてもいい?」
[おうち、帰る?]
「日も暮れてきたから」
[アズも一緒。部下さん達はどうしよ?]
紙を受け取って、案内してきてくれた兵士に見せる。涙目じゃないのに、少し安心した。
「どうしました、シーエさん。あぁ、我々ならご心配なく。反対側の村から来たのです。そこに寝床を確保していますよ。隊長をお願いします」
その声が切実で。アズサさん、慕われているんだなって確信できた。
「シーエ!! このグータラから話は聞いたよ。雪が溶けたら、一緒に向かおう。村が被害に遭ったなら、お前には報告の義務と権利がある。あと、メイヤー先輩への案内を頼みたい。今晩は君の家にお世話になる。あと、可愛い妹君を貸してくれたら嬉しい。あれだ、【がーるずとーく】をしてみたい。
皆!! 麓の村に帰れるな? よし、任せた。大丈夫だ、訓練を思い出せ!!
ニール! 先程は、よく二人を見つけれたな。あの村にいたお前の叔母上、明日が式なんだろう? 報酬だ、祝って孝行してやりなさい」
さっきの兵士に小さな布袋を手渡すアズサさん。音からして結構な金額入ってるぞ… 気前いいなぁ。そりゃ、慕われるか。ニールさんは仲間に、良かったなって揉みくちゃにされてる。
いいなぁ。生まれ変わったら、この隊入りたい。
「さて、シーエ。構わないか?」
「あ、はい! 喜んで。きっと妹も喜びますよ! 同年代の女の子、うちには少なくて。あの、なぜメイヤーさんをご存知で?」
「そうか、ありがとう。
え、あの方話していないのか?
私の、師匠なんだ。軍に入るまでいた用心棒の派遣会社のような所での先輩にあたる」
「へぇ。そういうことなら分かりました。あの人、村に来る前のこと、あまり話されないんです。ミリアちゃんを連れて五年前に来たんですけど。アズサさん?」
何か考えるみたいに顎に手をあてているアズサさんに声をかけると、慌てるように、何かを誤魔化すように、両手を振った。
「い、いや、なんでもない。そうか。
あの人、子供が。ミリアと言うのだな。ジュース、予備はあるか?」
「あ、もしかして、ミックスジュースをくれたの、アズサなの!?
あ、おはようございます、みなさん」
「おはよう、レイジュ。そうだ。土産にと思って持って来てたんだが、みんなも飲んでいたんだな。どうだった、味は?」
「ゴチャゴ、痛っ!? シーエ、何す、ムグゥ!? 「とても美味しかったですよ! ミリアちゃんも喜んでいたので、それ伝えるだけでお土産は先に渡したことにはなりますよ、きっと!」
いくら知り合いといえ、本人の目の前で悪口言わせるわけにはいかない!! シャンレイの口をふさいだまま、見ると、
とても珍しいものを見る目をされた。
「お前、そんなに仲良い奴いたんだな… ミーナス」
「プハッ! 俺は、シャンレイだって、何度言えばいいんだよ!? この名字、女みたいでイヤなんだよ!
これも、あの変人狐のせいで!!」
「じゃあ、黒髪ロングでいいだろ。あいつとの付き合い、まだ続けてるくせに。
これからもその気分屋をよろしく頼むよ、シーエ。
さ、帰ろう、ファリナ、レイジュ。訓練がわりにおぶらせてくれよな」
慌てた妹とその友達を背負って、先を行く青い鎧の女隊長を見ながら、僕は考えた。
この人が居れば都市は安泰だ。
だって、シャンレイ叱れるなんて。
読んでくださり、ありがとうございます。
次はおそらくお祭り回になると思います。
増えた女子3人が念願のガールズトークしたりとか、できたらいいなぁと。




