〜雪の中の屋敷と、鎧の響き〜
山の村、今はメイヤーさんのおかげで誰もいないところに着いた。
「うわぁ、派手にやったわね。【ほらーえいが】に使えそう」
見たことないけど。メイヤーさん、一旦思い切ったらとことんやる人だもの。
[大きいお家があるよ。そこかな?]
白くて小さい指の先をたどると、赤い屋根の屋敷があった。ここの村長さんの家かしら。手を握って、その方向に進んで行くことにした。
「すいません、失礼します。
兄さん、シャンレイさん、いますか!?」
誰もいないのに、あいさつをするのは職業病ね。
「今は雪灯りで何とか見えてるけど、時間が経つと危ないか。
エンチャント、蛍火!」
手袋の先に光を灯す。ランプ忘れるなんて、しまったわ。
結構声を張り上げたけれど、返事はない。人の声の返事は。
代わりに、ガチャガチャと、鎧の音が響いた。
「キャンセル」
早口で囁いて、光を消す。
さっき使ったばかりよ!糸がもったいない!
音からして、入ってきたのは真っ直ぐ行った方。裏口からみたい。昨日の会議で出たって兄さんが言ってた、貴族とは名ばかりの盗族ね。
とりあえず、正面にあるドアを開けると、礼拝室のようなところだった。
ステンドグラスがあったんだろうけど、割れて無くなってる。本当、メイヤーさん、手加減しなかったんだね。
なんて思いながら、下にある教卓のようなものに隠れる。これ、なんて言うのかしら?
しばらくすると、声が聞こえた。




