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下鴨神社探訪記

 今日でようやくテストが終わった。長らく続いたテスト勉強及びレポート制作の呪縛から解き放たれた僕は意気揚々と教室を出た。外へ出てみると朝方に降っていた雨は止み、すっかり晴れ晴れとした空が眩い青色に彩られていた。これは絶好の散歩日和だと思った。なので当初の予定を変更して北大路通りを歩くことにした。


 これまで一年近く学校に通っていたというのに、その周辺の地理をほとんど調べることなく過ごしてきた。旅行に行くとしても大概は四条だとか今出川だとかで、北大路を散策することはほぼ無かった。なんと勿体無いことをしていたか。軽く自省した。

 さて、どう歩こうか。そこで取り出したのはiPhoneだった。すぐ機器に頼ろうとする辺り、現代人の悪癖が見事に体現されている。だが気にしない。

 そんな便利なツールを用いて北大路の地図を開いてみると、どうだろうか。東側の方に広い土地が見えるではないか。詳しく見ると、そこはかの有名な下鴨神社だった。こんな近くにあったなんて知らなかった。灯台下暗しとはこのことを言うのだろう(言うのかな?)。


 ともあれ、計画は練られた。徒歩三十分の行程で下鴨神社へ参拝することにした。


 卯月も終焉を迎えようとしている青空の下で悠々と歩く道は心地良かった。特に鴨川を渡る所などは、都会でよくある排気臭い空気が洗われていたかのように感じた。行く先々に並ぶ店はとてもバラエティに富んでいた。喫茶店に不動産屋に自転車屋にスーパーに中国料理店(これはかなり驚いた)などなど。新発見がとても多くて、歩くだけで目移りした。


 そうして三十分ほど歩いて、目的地へとうちゃこ(到着、の意)。店と店の間の狭い交差点を渡って行くとは予想だにしていなかった。キャッキャッと喧しく笑う女二人を横目に見つつ、敷地へ赴く。

 今日は平日だったのに、割と参拝客は多かった。僕と同じように暇だったのだろう。中学生らしき団体がいたのも、おそらく暇だったのだろう。


 ひとまず中を一周してみるか。橋殿を見たりお茶の色をした木を眺めたりラジバンダリ(古い)。古き良き日本を思わせる景観に心を揺れ動かされた。現代のようにあらゆる人工物を埋め合わせたような様子は微塵も無く、自然の物の魂をそのままに形だけを変えたのかと思わせる建築。神の社として建てられたのも頷ける。

 そこから鳥居を潜り、相生社へ向かう。縁結びを願うことができるそうだが、カップルや女連れが並んでいたので辞退。出会いはあくまで受動的に行うのが僕の生き方だ。

 と、縁結びを諦めた直後だった。参道の端の方でガサガサと物音が聞こえた。何事かと思い、目を遣る。


「ニャー」


 猫だった。白い毛を纏った小さな猫だった。木陰からこっそりと顔を出すその様に心を奪われた。何を隠そう、僕は猫好きなのだった(不要な情報)。

 見つけてしまった以上はどうすることもできない。もふるしかないと思った。あの小さな体をまさぐるように触れ回すしかないという天命を授かった(犯罪臭)。

 猫がそそくさと歩く。僕はその後を追っていく。他の参拝客が見れば、その時の僕はよほど不審な人間だと思ったことだろう。悲しい哉、それは紛れも無い事実だった。

 追っていくうちに猫は関係者以外立ち入り禁止のエリアへ入ってしまった。人間のルールは猫には通用しない。僕は歯痒かった。

 木々に囲まれながらごろ寝をする猫。歩くたびに枝葉に頭が当たってしまう猫。その葉っぱを舐める猫。近くの水場から流れる水の音に驚く猫。そこへ忍び足で近づく猫。自然の中に生きる動物の姿はとても活き活きとしていた。

 その間ずっと神社の端で一点を見つめたまま佇んでいた僕。宮司さんが近づいてきた時はさすがに肝を冷やした。

 猫の愛らしい姿は既にiPhoneで撮り収めていた僕はその場を離れ、本殿へ向かう。


 興奮がようやく鎮まり、次に向かったのは御手洗社だった。石段を降りて川のほとりを歩く。そこはこじんまりとした社だった。しかし、その小ささは安っぽい印象を感じさせず、むしろ霊験あらたかな雰囲気だった。

 水辺の社とは、なんと風流なことか。これは拝まずにはいられなかった。

 しめ縄をイジっている巫女さんの側を通って、賽銭箱の前に立つ。財布から五円玉を召喚。賽銭箱にうっちゃる(捨てる、放り投げる、の意)。二礼二拍手の後に瞑目合掌。心中では、とりあえずなんか色々とお願いしますといった非常にあやふやなことだけ唱えた。そして一揖。

 神様に対する敬意をもう少し見せた方が良かったのかもしれない、と思ったが生憎僕は神様とは対等でいたい主義なのだ。

 不敬神、ここに極まれり。


 最後に向かったのは言社だった。そこでは十二支ごとに異なる神様の祠があり、自分の干支に対応した神様の所へ参るといった所らしい。

 僕は大物主神の所へ参った。干支についてはここではカッツ、アイ(割愛、の意)。

 五円玉が無くなったので、十円玉を代理召喚。そして賽銭箱へリリース。先ほどと同じ動作でお参りを済ませた。やはり心中で唱えたのはあやふやな挨拶だった。

 ちなみに神様にお願いをするのは初詣の時だけ、と謎の自分ルールを決めている。それは新年の初めにお願いしたいことを唱えているから、他の神様にも同じように唱えるのは押し付けがましいと考えたからだ。僕のお願いは既に田村神社にて済ませている。どうか素敵な出会いをお願いします(切実)。

 一通り巡ったのでそろそろ帰ることにした。帰る前にご朱印を購入する。最近から集め出していて、これで十一箇所目だ。

 部活へ顔を出そうかと思ったが、特に用事があるわけではないのでそのまま帰路に着く。


 やはり寺社仏閣巡りは心を洗われるな、と再認識した。今度はどこに行こうか。






 その後。無性にカラオケに行きたくなって独りカラオケを実行したことも記しておく。良縁に恵まれる日はまだまだ遠いな。

ただの思い出日記も悪くねぇなと思って書きました。こういうのも人生録で書いていこうと思います。

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