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合同集会と蘇生魔法

 魔法大戦の話題で盛り上がる特殊能力学科のメンバー。

 戦闘をする以上、皆どんな能力者なのかは気になります。そこで、まだ能力が解らない四人の女の子とクリス君、サノスケ君に質問してみる事にしました。能力は秘密って言われるかな、と思いましたが皆快く教えてくれました。


 僕は配布されていた白紙の本からページを一枚破り、メモします。

 メモ中、皆の特殊能力を聞かされる度に驚きを隠せません。

 仲間になっててくれていれば頼りになる人ばかりですが、敵対すると厄介な事この上無いです。流石特殊能力者は伊達ではありません。自室に戻ったらボードを設置して、メモを貼り付けて置く事にします。


 僕も自分の特殊能力を皆に話しましたが、術式省略と重魔法を信じて貰えないんです。僕だけ嘘をついて能力を隠していると思われるのは嫌なんですけど……。

 それ以外も能力はありますが、話しても理解を得られないと思うので黙っておきます。


 結局、魔法大戦当日に証明すると言う事で皆には納得して貰いました。

 というかレイシア達との授業に遅れてしまうので、半ば強引に納得させました……。


 程なくして魔法大戦の話題も一区切りして、特殊能力学科の皆が応接間を退出していくと、僕の近くにはプリシラ、アビスちゃん、エステルさんが残っています。そこでプリシラとアビスちゃんを見て気づいた事がありました。


「そう言えば、プリシラとアビスちゃんって出席確認後、何をするんですか?」

「割と薄情なのね、貴女」

「え……いえ、そう言う意味じゃないです!」

「解ってるわよ。レイシアとミルリアの所へ行くのでしょう? なら、私達も行くわ」

「いいんですか? 多分凄く授業退屈ですよ?」

「私は貴女の首筋を見ているだけで楽しいからいいのよ」

「……」


 狙われていました。


「アビスちゃんとエステルさんも一緒でいいんですか?」

「うん!」

「勿論です! お友達にお付き合いするのは当然の事です。それに私の能力は過去に書物に沢山記されている物ですから、今更研究するような内容はそれ程多くありません。私自身を鍛える方が理に適っています」

「解りました。じゃあ皆でレイシアとミルリアちゃんの所へいきましょう!」


 それで……意気揚々と本館に向けて出発したのはいいのですが。

 相変わらずエステルさんの人気が凄く、頻繁に声をかけられますが、今日は更に酷い事になっています。プリシラとアビスちゃんがいるからです。

 二人への黄色い声が多く、まるでアイドルが通っているかのように歩く方向に向かって人だかりできていて、僕も沢山挨拶をかけられています……。まぁ、実際エステルさんはアイドルみたいなものですけどね。


 ようやく挨拶ロードから解放されレイシアとミルリアちゃんと合流すると、二人ともプリシラ達と授業を受ける事ができると知り嬉しそうでした。

 今朝はおかしかったレイシアとミルリアちゃんですが、いつもの二人に戻っています。

 そして、これだけ身内が集まれば授業中の私語も多くなります。当然先生から怒られました……。

 真面目に授業を受けていると、うとうとしていたアビスちゃんが僕の膝にコロンと横になり眠ってしまいました。僕も寝たいです。


 ----------


「さて学院生の皆、揃ったわね」


 午後になり、学院生達が本館の裏手にある大きな建物に集まっています。コンサートが開けるような建物、と言えば解りやすいでしょうか。その建物で全学院生合同集会がはじまる所です。

 学科ごとに並び終えた後、舞台上でレイチェルさんが話し始めました。


「既に言わなくても皆知っている事だと思うけど、次のメルから数えて一メルダ後、王都の郊外で学院行事を行うわ。行事の名は魔法大戦、場所は遺跡跡地周辺で実地。平原や林なんかも戦場になるから、後ほど配布する地図で場所をしっかり把握しておきなさい。戦場のどこが軍の拠点になるかは次のメルに軍分けで一緒に告知するわ。そして、今回の行事には我が学院の特殊能力学科に在籍するミズファが作り出した「時間」の概念を導入するわよ」


 ここで騒めきが起きます。僕の近くに並んでいるお嬢様方から祝辞を頂いてしまいました。


「はい、静かにしなさい! この時間という概念は次のメルから学院そのものにも導入するからそのつもりで。全ての学科に時計を配るから後で確認しなさい。ゆくゆくは一人一つ、時計を配布するから暫く待っていなさい」


 ここで歓声が起こりました。一応魔法石が使用されている訳ですから当然です。一般層出身の人は個人で魔法具を持つのは難しいですからね。


「で、魔法大戦で導入される時間を使い、制限時間という物を設けるわ。制限時間は三時間。この三時間で一番優秀な成績を残した軍が勝利になるわ。長期戦を考えて悠長な事をしているとジリ貧で負けるから注意しなさいよ。この魔法大戦は定期的に行っていくから、いずれ制限時間も解ってくるでしょう。先ずは次のメルから学院に導入される時間に体を慣らしておいて。時間についても後ほど、地図と一緒に資料を全ての学科に配るから必ず読む事。魔法大戦まで体調管理に気をつけなさいよね! 以上!」


 そこでレイチェルさんが舞台から退場しました。学生全体から拍手が起こります。

 まぁ、資料を見るまで制限時間という言葉自体が解らないでしょうね。

 後は学科ごとの主任から連絡事項や魔法大戦で使われる結界についてなどの補足事項が話され、集会は終了しました。


 その後、寮に皆で帰ろうとしていると、またもや学生の皆さんに囲まれ、時間についてあれこれ聞かれました。資料を読めば解る筈だと言い残して皆で逃げます。今後毎日このやりとりさせられるんですかね……。


 --------------


 次の日の朝。

 今日はいよいよ、シズカさんの復活の日です。

 僕の魔力は万全の状態に戻っています。


 昨夜の内にシズカさんには僕の中から外に出て貰っています。

 そして、現在プリシラとシズカさんを自室で待っている所です。因みに時間は8時ちょっと前ですね。


 丁度針が8時を指す頃に合わせて、部屋にノックの音が響きました。


「ミズファ、来たわよ」


 頭の中にプリシラの声が聞こえてきます。


 どうぞ、入ってください!


 僕が頭の中で返事をすると、扉が開きプリシラとシズカさんが入室してきました。


「お早う、ミズファ」

「お早うございます、ミズファさん」

「お早うございます二人とも!」


 僕はテーブルから立ち上がり二人に駆け寄ります。


「いよいよ、このメルが来たのね……」

「プリシラ、待たせて御免なさい」

「何で貴女が謝るのよ。悪いのはシズカなのだから、貴女は上から見下していればいいの!」

「プリシラちゃん、いくら私でも傷つきますよ」

「復活したら私専属のメイドにするから覚悟して置きなさい」

「んー、ある意味それもいいかもしれませんね」


 シズカさん、ほんとブレないですね。掴みどころが無いと言うか……。そこがシズカさんの魅力でもありますけどね。


 魂だけの状態になっても彼女はいつも笑顔でした。

 何の迷いもなく僕に強大な力を授けてくれました。

 シズカさんが居てくれたから、僕はこの世界で生きる事ができました。

 この沢山の感謝の気持ちを、少しでも返す為に。


「さぁ先ずは復活して、朝ごはんを三人で食べながらお喋りしましょう!」

「ええ、そうね。じゃあミズファ、お願いするわ」

「ミズファさん、宜しくお願いしますね」

「了解です!」


 今の僕の力を集結させて。

 今まで積み上げた力を集中させて。

 今持てる能力を最大まで研ぎ澄まして。


 魔法具を身に着けて。シズカさんの魂は目の前に。全ての準備は整いました。


 さぁ、行きますよ!!


 両手をシズカさんへと伸ばします。


「魂を現世に繋ぎ止める力+肉体を再生させる力を合成!!」


 伸ばした手から眩い光が溢れます。


完全蘇生術式(リザレクション)!!」


 溢れ出た光がシズカさんを照らします。

 光を全身に受けたシズカさんの魂が、つま先から少しずつ具現化してゆきます。


 再生していく体はやがて胴体を抜け顔に達し、長い髪の一本に至るまで、この世に完全な具現化を果たしました。

 光が徐々に収束して消えていくと、目の前の人物が涙を流しながら自らの体を抱きしめています。

 

 ニジョウ・シズカさんがこの世に復活した瞬間でした。



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