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学院行事1

 午後からはレイシア、ミルリアちゃんの順に受けたい属性学科に付き合った後、今日の授業は終了しました。その後、寮に帰る前に三人で特殊能力者専用の研究棟に訪れ、僕の為に用意された研究室を見に来ている所です。


 部屋は石造りの長方形で比較的広く、12畳+生活区域が8畳程度ありました。ここで寝泊り出来るよう配慮されていて、一定の家具と生活用品が一通り用意されています。それ以外は魔法関連の書物、魔法具用の宝石が沢山、ポーション系統の基本材料、先人が残した特殊能力について記されている書物など。


 基本的に必要な物は特殊能力者によって全然違うので、最低限の物しか無い訳です。

 僕は別に研究する必要が無いので、ここを身内で使うつもりでいます。溜まり場みたいなやつですね。


「凄いですね。ちゃんと茶器等も完備されておりますし、どれも貴族界隈で使用されている高級品ですよ」


 部屋の中の家具を一通り見ていたレイシアが、茶器棚に感心していました。


「私が驚いたのは……特殊能力学科専用の、メイドが……いた事です」


 ミルリアちゃんの言う通り、僕もびっくりでした。あのお屋敷のような学科棟を誰かが掃除しないといけませんから、やっぱり雑用をこなす人は必要なんでしょうね。寮にも沢山専属のメイドさんがいますし。

 この研究棟も毎日掃除してくれているようで、埃一つありません。

 これならプリシラ達を呼んでも大丈夫ですね。


「大体部屋の感じが掴めましたし、帰りましょう」

「ええ、そうですね。ミズファとミルリアさんのお陰でメルを大変楽しく過ごせました。今後も暫く続くと思いますと、心が躍ってしまいます」

「レイシアが嬉しいなら、僕も嬉しいです! というか、僕も段々楽しくなってきてました」

「初めは、不安でしたが……上手くやっていけそうな、気がします」

「それでしたら、私も学院に誘った甲斐がありました」


 笑顔で僕とミルリアちゃんに応えます。

 今後、この輪にプリシラ達が加わるので、更に楽しさは増すでしょう。


 一通り研究室を見て満足した僕達は学科棟から出ると、クリス君と本を読んでいた男の子が研究棟に入る所でした。


「あ、お二人とも今から研究ですか?」

「あぁ、ミズファ君か。研究というか、帰宅だな。僕と【サノスケ】はこの研究棟が住処みたいな物さ。寮は殆ど女子専用といってもいい程男女の格差が酷くて近寄りづらいから。君はこれから寮に帰る所かい?」

「うん、そうです。言われてみれば……寮で男の人って殆ど見ませんでしたね。あ、所でそちらのキミがサノスケ君ですか?朝は挨拶が出来なくて御免なさい。改めて宜しくお願いしますね!」


 ぺこりとお辞儀する僕。


「……いや。俺も人見知りが激しくて、すまん。今後宜しく頼む」


 表情を変えず淡々と挨拶を返してくれました。

 察するに、クール系美男子ってやつなのかな?


「ミズファ君の後ろにいるのは、レイシア君か。それと、もしかして君が土姫か?」


 レイシアを見知っていたクリス君はミルリアちゃんに興味を持ったようです。


「あ、はい。ミルリアと……申します」


 ミルリアちゃんがちょっと僕の陰に隠れつつペコリとお辞儀します。


「あ……。いや、怖がらせるつもりは無かったんだ。その、ごめん」

「いえ、大丈夫、です。私も、ごめんなさい」


 頬をかきながら赤面しているクリス君。

 それを不思議そうに見ているミルリアちゃん。

 男の子がこういう反応する時は何となく解ります。もしかしてクリス君、一目惚れですか?駄目ですよ?ミルリアちゃんは僕達の大切な子ですから、あげません。


「さて、暗くなってきていますし、そろそろ帰りましょう! それじゃあクリス君、サノスケ君また次のメルです!」

「あ、あぁ。また」

「……おぅ」


 僕は半ば強引に話を切り上げてレイシアとミルリアちゃんの手を取って歩き出します。

 レイシアは気配りさんなので、手を引かれつつも振り返ってクリス君とサノスケ君にお辞儀をしていました。


 --------------


 夜になり、寮の自室にいる僕。

 夜ご飯を皆で食べる為、メイドさん達にお願いして、部屋の中に予備のテーブルを運び込んで貰っていました。ご令嬢達が自室でご飯とかパーティーをする事が多いそうで、その経験上メイドさん達はとっても手馴れています。更に運び込まれた椅子も並び終えて、設置完了です。


「それじゃ引き続き、料理をこの部屋までお願いしますね!」


 僕の指示に深々と頭を下げて部屋を退出するメイドさん達。

 それと入れ違うようにウェイル君が飛び込んできました。


「ミズファ姉ちゃん来たよ!」

「いらっしゃい、ウェイル君! お昼沢山食べていましたけど、大丈夫ですか?」

「うん、全然平気!剣術を習ってるとすぐお腹すいちゃうから」


 次に開きっぱなしの扉をノックしてシルフィちゃんが入室してきます。


「もう、ウェイル! 女性の部屋にノックも無しで入るなんて失礼ですわよ! ミズファお姉さま、ウェイルが無礼を致しましたわ」

「シルフィちゃんもいらっしゃい! 気にしないでいいんですよ、僕達は身内なんですから!」

「そう言って頂けるのはとっても嬉しいんですけど、ウェイルの為になりませんの」


 そう言いながらウェイル君の頭をこづくシルフィちゃん。

 ミルリアちゃんとの時間がめっきり減ったので、その分しっかりお姉さんしてますね。


 更に扉の前に人が集まってきます。


「どうやら、料理はまだ運び込まれていないようね」

「あ、プリシラもいらっしゃい! 直ぐに持ってきてくれますから、先に座って下さい」

「席順は気にしなくてもいいかしら?」

「うん、僕の部屋では皆そういうの無しです」

「わかったわ」


 続けてシズカさんとアビスちゃんが顔を出します。


「私は食べる事ができませんけど、お呼ばれに参上しましたよ」

「後二日ほど待ってください……。ほんとにすみません」

「いいんですよ。魂のままだとお腹すきませんから」


「みずふぁーおゆーはん!」


 シズカさんがニコニコとしている中、アビスちゃんが駆け寄って来て、僕のおなか付近に抱き着いてきました。


「アビスちゃんもいらっしゃい。直ぐに御飯が来ますからね。あ、そうです、アビスちゃんにお友達を紹介しますね!」

「んおー?」

「この子がシルフィちゃん、こっちの男の子がウェイル君です」


 僕の紹介にシルフィちゃんとウェイル君がお辞儀します。

 その後、ウェイル君が僕のスカートの裾を引っ張ると。


「ねえねえミズファ姉ちゃん。この子人間じゃないよ?」


 やっぱりウェイル君には解りますか。


「ウェイル君はこの子の名前に聞き覚えある?」

「海龍アビスの事?」

「うん、この子がそのアビスちゃんなんです」

「へー凄い!海龍アビスってこんなに可愛い女の子だったんだね!」


 ウェイル君の可愛い発言に、ポっと頬を赤らめるアビスちゃん。


「私も、人にしては魔力の方向性が突き抜けている、というか別の存在な感じがしましたの。そういう事でしたのね。アビス様、どうぞ仲良くして下さいまし!」

「うん!!」


 三人で手を繋いで輪を作ってピョンピョン跳ねてます。何この……何?


「邪魔するわよミズファ」


 三人の輪に和んでいると、次はレイチェルさんが来ました。


「あ、レイチェルさんもいらっしゃい!」

「まぁ、私はお酒飲みに来ただけだけど」


 少女がお酒飲むのって絵柄的にどうなんですかね……。


「あぁ、一応伝える事もあるから、さっさとディナー始めなさい!」


 いつものように不機嫌そうにそう言うと席に座ります。でも、上機嫌の裏返しなのは最近解ってきたことです。


 程なく、まるで貴族のパーティーに出席でもするかの様な豪華なドレスに身を包んだレイシアが来て、その後にエリーナ、ツバキさん、ミルリアちゃんも一緒に来てくれました。


 そして、更に。


「今晩は、皆様。今宵はディナーへのご招待を頂き、有難うございます!」


 お姫様の立場なエステルさんは来てくれるか微妙な所でしたが、良かった来てくれたようです。

 これで集まりましたね。


 皆席に着き、談笑を交えて盛り上がっていると、料理が沢山運び込まれてきました。直ぐにテーブルへと並べられ、ちびっ子三人から歓声が起こります。レイチェルさんは早くも酒盛りです。

 エステルさんがここで夕ご飯を一緒にする事を寮母さんも知っているので、傍付きとして数人のメイドさんが周囲に待機しています。


「さて、食事しながらでいいから皆ちょっと聞いて」


 レイチェルさんがワインを片手に持ちながら立ち上がりました。


「ミズファの作り出した時間の概念が世界に認められたわ」


 あ、それ僕が言うつもりだったのに! まぁ、いいですけど。

 すぐさま皆から祝福を受けました。


「それで、その時間を学園も数メル後に導入するんだけど、それを記念に行事を行うわ」

「行事、ですか?」


 レイシアが疑問を投げかけると。


「そうよ、名付けて学院魔法大戦よ!」

「……」


 何ですかそのぶっそうな名前。


「何するつもりですか……」

「勿論戦うのよ、学院生同士で」

「……え」

「折角時間を導入するんだから、時間を使った行事を楽しみたいじゃない」

「制限時間で戦うっていうのは解るんですけど、大丈夫なんですか? 下手したら死人が出ますよ」

「そこは平気よ、しっかりと安全を期して行うから」


 賑やかだった室内が不安の沈黙に変わっています。


「何よ、ちゃんと説明するから黙らないでよ!」


 無理言わないでください。

 ワインを飲み干し、グラスをテーブルに置くとレイチェルさんが説明を始めました。



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