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再会

 海底神殿で目的の物、シズカさんを映し出す古代魔法具を入手した僕達は現在、王都の魔法学院の寮へと戻っています。今は夜の20時を指している時間なので、皆自室にいると思います。

 新たに仲間になったアビスちゃんは、レイチェルさんからミルリアちゃんと同じ部屋を与えられていました。


 寮母さんの許可を貰えれば僕の部屋に泊める事もできますが、まだ許可が下りるには数日必要のようです。こればかりは、レイチェルさんでも独断では決められないそうなので。


 因みに海底神殿の事ですけど。

 古代魔法具庫を後にした僕達は、シズカさんを映し出す古代魔法具以外には手を付けず、改めて封印状態に戻しました。皆もそれには同意してくれています。

 盗みに来た手前で説得力はありませんけど、ここにある古代魔法具はこのまま寝かせて置いた方がいいでしょう。悪用されたら大変な事になりますから。


 遥か昔からあるダンジョンなのに、誰一人として転移魔方陣区域を突破出来ていないようでしたし、世界に流出する事は無いと思いますけどね。魔術師で強運の持ち主がたまたま五人いて、その五人がパーティーをたまたま組んでいて、たまたま停止した魔方陣に気づいて先に進んだ場合もあったかもしれませんけど、古代魔法具庫に到達できていないなら問題ありません。

それはつまり冒険者の死を願う事になるので、もう誰にも転移魔方陣区域に挑戦して欲しく無いですね。


 地上に戻るとアビスちゃん騒動で冒険者さん達が大騒ぎしていましたが今は沈静化し、力試しの場として相変わらず人気のあるダンジョンに戻っています。


 そして今日。

 この後、プリシラが部屋を訪れる予定です。

 王都に戻って更に三日ほど経った今日、昼のカフェテラスで、プリシラがシズカさんを呼び出して欲しい、と告げてきました。


 海底神殿からの帰路、そして今日に至るまで、プリシラはずっと黙ったままでした。

 僕の頭の中にも話しかけてきません。

 きっと間もなく会う事になるシズカさんを前に、色々思う所があるのだと思います。

 300年もの間、彼女の言いつけを守り、面影を探し続けたんです。今のプリシラを邪魔をする無粋な人はいません。


 コンコンと、部屋に響くノックの音がしました。

 プリシラが来たようです。

 僕は入口へと移動し、扉を開けます。


「いらっしゃい、プリシラ」

「ええ、お邪魔するわね」


 僕とプリシラは豪華なテーブルの席へと着くと、早速僕から切り出します。

 

「プリシラ、いつでも準備できていますよ。僕に気を使わなくていいですからね」


 テーブルに置いてあった古代魔法具を手に取りながら、笑顔でそう言います。


「……ええ。ようやくシズカに会う為、気持ちの整理がついたわ。もう貴女しか見えていない筈なのに、いざ会えると解ると、駄目なのよ。楽しかった思い出が浮かんできて。シズカの笑顔が……忘れられなくて」

「それでいいんですよ。もう迷う事なんて無いです。今までの気持ち、全部シズカさんにぶつけましょう!」

「ミズファ……」

「さぁ、呼び出しますよ!」


 僕はプリシラを元気づけながら席を立ち、古代魔法具をテーブルに立てかけて、そこから離れます。

 古代魔法具は魔力を込めると画面が光るようになっていて、映す対象を認識させると、見えないものが見える様になる仕組みのようです。


 光っている古代魔法具から光が溢れ、テーブルと僕の間に溢れた光が斉射されます。

 そして光は徐々に人の姿を形作っていくと……。


 巫女服、黒く長い髪、落ち着いた物腰の女の子。

 レイスに閉じ込められた空間で見たシズカさんが映し出されました。

 目を瞑っていた彼女は少しずつ瞼を開けていきます。


「……私。そうですか、外の世界に出れたのですね」

「シズカさん、お久しぶりです!」

「ミズファさん、ずっと貴女の中から見ていましたよ。この古代魔法具を見つけてくれて有難うございました」

「いいえ、それにこれはまだ、本来の目的の途中です。まだ直ぐには復活させてあげられませんけど、間も無く実現出来ると思います。待ってて下さいね!」

「ミズファさんがしようとしている事、解った気がします。独自魔法と合成魔法ですね。私ですら、そのような高度な魔法技術は持っていませんでした。貴女は転移させられた【私達】よりも、優れた方ですよ」


 そこで、シズカさんは振り返ります。

 プリシラの方へと。


「シズカ……」


 プリシラの呟きに、シズカさんは微笑みながら。


「ただいま、プリシラちゃん」

「シズカ……しずかぁぁぁ」


 プリシラの頬から大粒の涙が溢れ出しました。


「そんなに泣かないで下さい。私がいなくなって清々したって言ってたじゃないですか」

「馬鹿!!どれだけ……どけだけ心配したと思ってるの!? ずっと、ずっと探しても居なくて、毎晩寂しい思いで泣いて……貴女が居なくなって、どんなに辛い思いをしたのか解ってるの!?」

「そうですよね。300クオルダいえ……300年もずっと私の帰りを待っていてくれたんですよね。私は本当にプリシラちゃんに酷い事をしました」


 シズカさんがプリシラをなでるようにしています。


「シズカ……私頑張ったのよ。貴方の言った事、全部守ったわ。褒めてくれる?」

「ええ。偉いですよプリシラちゃん」

「ぐす……私……私ずっと会いたかった。寂しかった……」

「ええ。もう私は何処にも行きません。ずっとプリシラちゃんの傍にいます」


 そこにはもう、気高きプリシラはおらず、一人の少女がいました。

 少女はしゃがみ泣き続け、その隣に付き添いながら、優しく語り掛けるお姉さんがいます。


 ……古代魔法具は一度起動すれば、映し出されたシズカさん自身の意志で僕に戻るまで自由に行動ができます。


 僕は静かに部屋から退出し、その場を後にします。

 この部屋には……長い長い年月を超えた、二人だけの時間がありました。


 -------------


 コンコンと、部屋をノックします。

 すると、直ぐに扉に近寄ってくる音が聞こえました。


「はい、何方……でしょうか?」

「ミルリアちゃん、ミズファです」

「……主、様!?」


 僕の声を聞くと、大慌てで扉を開けるミルリアちゃん。


「主様、どうされたの、ですか?」

「うん、実は今晩、ここに泊めて欲しいです」

「……はい、喜んで。さぁ中へどうぞ……我が主」


 直ぐに察してくれたのでしょう、何があったかを聞かずに、ミルリアちゃんは僕を部屋へと招き入れてくれました。


「あ、みずふぁ~!」


 元気な声と共に、部屋の中に居たアビスちゃんが僕に抱き着いてきました。


「今晩は、アビスちゃん」

「うん!」


 アビスちゃんはお風呂上りの寝間着姿でした。可愛い白のネグリジェです。ミルリアちゃんもちょっと大胆な黒のネグリジェを着ていました。


「みずふぁ、会いに来てくれたの?」

「うん、アビスちゃんはここに来たばかりですし、傍にいるって約束ですから!」

「うん! ねえねえみずふぁ、わたしと一緒にねよー」


 僕の手を取りぴょんぴよん飛び跳ねるアビスちゃん。


「そうですね、じゃあミルリアちゃんも入れて三人で寝ましょう!」

「わ、私も……宜しい、のですか?」

「うん、勿論です!というか、ここミルリアちゃんの部屋じゃないですか、遠慮する必要なんて何処にも無いです!」

「うん、みるりあも一緒」

「それでは……お言葉に、甘えて」


 僕は二人に手を引かれてベッドへと向かいます。

 直ぐに眠るのも勿体ない気がしたので、暫く三人でパジャマトークで楽しんでその夜を過ごしました。


 プリシラもきっと、今は楽しいお話をしている筈です。

 これから少しずつ、止まっていた二人の時間が動き出すのです。


 後は、シズカさんの蘇生だけですね。

 僕は膨大な魔力を持っているので、この力を利用してある独自魔法を作成していました。

 魔法具の力をもってしても実現不可能だと言われた「蘇生」です。

 蘇生出来る方法が無いなら、作ればいいのです。

 そして、蘇生魔法だけでは魂を肉体に戻せるか不安なので、魂と肉体連結の独自魔法も作成しています。


 二つの魔法を合成させた場合のイメージが固まってきたので、蘇生魔法が使えるのも近日中の予定です。

 完成させますよ、必ず。


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