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「案ずるでない、此れがクロームである。」
「えええ!?いや、クロームではないでしょ、全然これクロームではないでしょ。」
翔馬は跳ねるように立ち上がると、全身で焦りながら詰め寄った。
まるで一万円札を消された手品の被害者のような心境だ。いや、それ以上か。
「ちょ、本気で、マジで何処やったんすか?」
「近づくでない!」
「いやいやいやコレ、納得できないでしょうが!」
翔馬は無視して縋るように小さい方、クロームに何かした方の羽衣を掴む。
何処かに隠せるとするならば、幾重にも折り重なった異様にボリュームのあるこの衣服以外には考えられなかった。
「これ、何をするか!!!」
「――――!!!!!」
形振り構わず必死な翔馬に引っ張れらて、ふわふわ浮かんでいたスカーフのような布が一枚、風に煽られて何処かへ飛んで行ってしまった。
「あ、すいません……」
「「!!!!!!!!!」」
二人が絶望した表情で翔馬の事を見詰める。
「御主……」
「本当に、すみません。」
「あれが無いと、帰れぬのですぞ。」
「はあ。」
翔馬はまだ意図が飲み込めずに頷いた。