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「……って感じでさー、結構みんな頑張ってくれたんだよね。」
翔馬は照れながら、その手に握り締められた色とりどりの折り鶴からなる千羽のお守りを父親の前に差し出した。
「先生たちも、その、協力?してくれたから、割と早く出来たってのも、あるけど。」
「ああ…うん、ありがとな。ありがとう。」
父親は驚き、そして眉を下げて翔馬の頭を撫でた。
本来なら水曜日のこの時間、一旦仕事から帰って早めの夕食を食べた後に見舞いに行くというのが父親の習慣になっているのを翔馬は知っていた。
そこで、部屋へ一瞬引っ込みサプラーイズ!!とばかりに翔馬は千羽鶴をワサワサ言わせながら登場したのだ。
しかし、父親の反応は想像していたものと随分違っている。
「あー、えっと…」
感激屋で、涙もろい父のこと、号泣して飛びついてくるかと思ったのに。
身構えていた分、肩透かしを食らって翔馬は困惑した。
むしろ、迷惑そうにも見える表情に気持ちが萎んでいく。
「何か…あ、こういうのって、持ってっちゃいけない病室だった?」
翔馬は思いついて言った。
何かのドラマで、ビニールハウスのような部屋の中は消毒済みのものしか持ち込み禁止とかいうのを聞いた気がする。
「いや、そういうわけじゃない……けど…」
父親は、翔馬と千羽鶴、そしてちらりとクロームの顔を見て決心したように頷いた。
「うん、行こう。」