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科学の極み! (連載版)  作者: 芝高ゆかや
6章 リアルと仮想の曖昧な境界線
60/60

60 立ち止まり、また歩き出す

 学校の研究棟からの帰り道、スイ達と別れた2人は、微妙な空気になっていた。いつもなら隣りを歩くトアリーが、キリュウの歩くすぐ後ろを恥ずかしそうに歩いており、ずっと会話がない。



 ―――そんなに恥ずかしがらなくても……それに、あのメンバーに相談した時点で、暴露されるって予測できそうなんだけどなぁ



 トアリーの気配を背中で感じながら、キリュウは苦笑いした。

 自宅近くまで来たとき、ようやく話す決心がついたのか、トアリーが口を開いた。


「キリュウ? あの……ピアス、ずっと私が持ってるんだけど、このまま預かる? それともつける?」


 ある程度気力を取り戻したキリュウではあるが、念のため、まだ研究所に出入りする意思があるかをトアリーが確認する。


「あの本をさ……明日、返却するから。そうしたら、研究所に連絡入れないといけない」


「わかった。今、持ってるから、少し待って」


 トアリーは頷き、ポケットから懐紙に包んだ状態のピアスを取り出した。


「キリュウ、じっとしてて?」


 どうやらトアリーが、ピアスをつけてくれるらしい。だが、いくら待っても、なかなかピアスホールに上手く入らないようだ。


「トア?」


「待って……手が震えちゃって、上手くつけられないの」


 トアリーがもう片方の手で、震える指先を包んだ。


「もしかして、緊張してる?」


「うん、そうみたい。なんだか変……」


 トアリーが困った表情を浮かべる。


「変じゃないよ、オレもそうだから。好きすぎて……触れるとき緊張する」


 キリュウの言葉を聞き、トアリーは俯いた。どんどん赤くなっていき、キリュウに見られまいと、顔をキリュウの肩口に埋める。


「オレ、幸せだ」


 フッと笑ってそう言ったあと、穏やかな笑みを浮かべたキリュウは、トアリーの指先に触れ、ピアスを受け取った。



【了】

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